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秋山清成税理士は「売れない」という深刻さを実感して様々なことを検討し、事前の対策として1つの方法を考えた。
「親が、生きている間に貯金など必要な財産を子供たちに移し、親の財産を不動産など不必要なものだけにして、相続時に相続放棄することです」(秋山税理士)
実際に秋山税理士は、将来の相続を心配する男性に、この対策を提案した。
2人の子を持つ、70代男性の場合
家と山林を所有する関西在住の70代の男性。
男性の妻は亡くなり、40代の長男と長女は独立して家を持ち、男性の家と山林を継いでくれる家族はいない。
男性は3000万円の預貯金があり、長男と長女に遺したいと思っている。一方で山林は売れる見込みがなく、長男と長女が相続すれば負担になることは明らかだった。
日本の相続制度では、相続放棄すればすべての財産の相続を放棄するしかなく、必要なものを相続し、不必要なものを放棄することはできない……。
男性は秋山税理士の提案にしたがって、まず、3000万円の預貯金を長男と長女に半分ずつ贈与した。
この時は、贈与税のかからない「相続時精算課税制度」を利用した。
この制度では、60歳以上の父母や祖父母が20歳以上の子供や孫に財産を贈与した時、受贈者1人につき2500万円まで特別控除(非課税)が認められる(利用する時は税務署に申告する)。
ただし名称の通り相続時に精算するもので、男性の例では、男性が死亡した時に3000万円が男性の財産として加算され、課税対象となる。