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相続放棄で生じる問題

 不動産を相続放棄する時は問題が生じる可能性がある。

 相続人が相続放棄した時は、次の順位の相続人が相続することになるため、次の順位の相続人に相続放棄したことを伝える必要がある。伝えずに、3カ月の期限を過ぎれば相続放棄できなくなるためだ。

 相続人全員が相続放棄した時は、家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立て、財産を処分してもらう。

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 東京地裁に聞くと、「相続財産管理人への報酬として原則100万円の予納金を納める必要がありますが、予納金は余れば申立人に返還されます」とのことだった。

売れなければ国庫が引き取る?

 財産を相続しないのに100万円を支払うのは理に合わないが、それより、売れない不動産は相続財産管理人でも売れない可能性が高い。長い期間売れず、予納金が尽きれば追加で予納金を納める必要があるのか、東京地裁に聞いても明確な回答は得られなかった。

※写真はイメージです ©iStock.com

 また、「売れなければ国庫が引き取ってくれる可能性がある」と聞いて財務省理財局に問い合わせたが、ここでも明確な回答は得られなかった。

 売れない不動産だけを相続放棄するケースはまだあまりなく、制度が整備されていないとみられる。

生前対策は親が考えるべき

 家族対策でも税対策でも、最大の問題は「誰が切り出すか」ということ。子供が切り出せば親が感情を害すことが多く、トラブルになりかねない。

 岡田俊明税理士が話す。

「相続は亡くなる人が遺していくものですから、生前対策はまず親が考えるべきことです」

 親が考えてもすぐに答えが出るものでもない。

「親と子供たちの気持ちが最初からぴったり合うことはありません。親が相続対策を切り出した時、特定の子供に多く譲るのではないかと他の子供が疑心暗鬼になることもある。親は、誰に何を遺すかを見極め、子供たちが納得するまで時間をかけて話し合う覚悟が必要です」(岡田税理士)