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9年付き合った元カノの結婚が引き金に

 女子とは距離はあったという服部被告には、中学時代から交際していた女性がいた。結婚を視野に入れ、両家の顔合わせなど準備を進めていたが、2020年11月、自身の誕生日に婚約破棄を告げられる。「他の人との付き合いがうまくいってなくて、彼女だけが信頼できる大きな存在だった。結婚すると思っていたのでそういった状況で別れることは、ショックが大きかった」と振り返る。その後、仕事でも自宅待機処分となった。

「チャット業務で同じ単語だけ繰り返し送ってくるお客様がいて、日本語が通じないのかと思って『日本人ですか?』と聞くとクレームが入ってトラブルになった」(被告人質問での証言)

 そんな2021年5月頃、何気なくLINEを開き、別れた彼女のプロフィールを見ると、苗字が変わっていた。メッセージ部分に「結婚しました」と書かれていた。

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「9年間交際して、別れることを受け入れたつもりでした。どういう人生を歩もうがとやかく言うつもりはありませんでしたが、まさか半年で結婚するとはちょっとショック、驚きが大きかったですね。9年という月日、少なくとも自分にとっては長い期間だった。別れてたった半年で、結婚……。自分の存在価値が分からなくなり、生きている意味がないんじゃないか、死にたいと思うようになりました」(同前)

「死にたい」と思ったが、かつてのように自殺を図ることはしなかった。その代わり「死刑になりたい、そのために人を殺さないといけない」と思うようになったのだという。

服部恭太被告(FNNプライムオンラインより)

日記によって大量殺人の“モチベーション”を維持

 事件まで、服部被告は日記のような記録を残している。

「そもそも殺人が悪いことだと分かっている。その気持ちを抱き続けるのは難しい。残す形にしてそれを見返すことで、殺人に対して興味を持たなければならない、そういう気持ちでした。もともと殺人をやりたいとも思っていない。あくまで目的は死ぬことで、そのために死刑を選んだ。そのために何をしないといけないかと考えると、殺人。その殺人に興味を持たないといけないんだと」

 大量殺人の“モチベーション”を維持するためのひとつが、日記だった。さらに、ジョーカーも被告なりの“モチベーション”維持の存在だったようだ。

「自分は殺人を犯さないといけないという思いがあった。より具体的にイメージできるキャラクターをたまたま見返したときに、ジョーカーというキャラクターを目標にすればいいんじゃないかと。神戸にいる間に映画を見返した」

2021年11月、服部恭太容疑者(当時)が事件直前まで滞在していたビジネスホテルを家宅捜索し、段ボール箱などを運ぶ警視庁の捜査員ら ©時事通信社

 ジョーカーを目標にし、対馬被告の犯行を真似た服部被告に対して、判決は「自分勝手な理由で、多数の乗客の生命を狙った無差別的な犯行」と指摘し、万引きをきっかけに事件に至った対馬被告に対しても判決は「自身の怒りを抑えきれずに、無関係の他人に無差別に危害を加えるという身勝手な動機」と指摘している。