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甲子園での実績がない選手たちの「怪物級」の活躍

 逆に、甲子園での実績がない選手が、高校を卒業してからすぐに「怪物級」の活躍を見せる例が増えてきた。

写真はイメージです ©AFLO

 2021年にアメリカンリーグMVP、2023年WBCでもMVPを獲得した大谷翔平は、甲子園に二度出場しているが、いずれも初戦敗退。とくに、3年春のセンバツでは藤浪と森を擁する大阪桐蔭に対し、自らホームランを放ち試合中盤までリードしていたものの、最終的にはチーム力の差で敗れている。高校野球ではトップになれなかったが、プロ入り以降、個人の力を着実に積み重ねて、世界一の野球選手とも言われる成績を残している。大谷のみならず、21歳という若さで2023年WBCの世界一に貢献した佐々木朗希や、NPB史上初となる2年連続投手5冠の山本由伸(現・オリックス・バファローズ)は甲子園に出場すらしていない。

 かつて、世界の誰よりもヒットを積み重ねたイチロー氏は愛工大名電に入る前に「目標は甲子園出場ではありません。僕をプロ野球選手にしてください」と当時監督の中村豪氏に伝えたという。そもそも、イチロー氏が愛工大名電を選んだ理由は、中村氏が型にはめない指導方針で、選手たちに「やらされている百発より、やる気の一発」を提唱していたからだという(※5)。

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 大谷や佐々木、山本のように、甲子園で活躍せずとも、圧倒的な成績を残している選手がさらに増えていくと、「甲子園」ではなく「プロ」で活躍するための環境を選ぶ選手も増えてくるのではないか。高校野球が高度化するにつれ、プロでの成功と甲子園で成績を残すことは、まったく別物になっていくかもしれない。

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