八冠の夢が際どくつながった。

 将棋界にある八大タイトルのうち七冠を保持する藤井聡太にとって、残るタイトルは王座のみ。永瀬拓矢王座への挑戦者を決める第71期王座戦挑戦者決定戦が8月4日、大阪の関西将棋会館で行われた。対戦相手は豊島将之九段。藤井と最も多く対戦し、最も多い勝ち星(11勝)を挙げている。難敵が立ちはだかった。

©石川啓次/文藝春秋

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 振り駒で先手番を得たのは藤井。将棋は1手先に指せる先手がわずかに有利で、これが将棋の神の寵愛なのか。後手になった豊島だが、秘策を用意していた。藤井が王座戦準々決勝で苦戦した「村田システム」をぶつけたのだ。だが藤井に慌てた様子はない。自然に攻撃陣を構築し、豊島陣に攻めかかってペースをつかむ。それでも豊島は実にしぶとかった。