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間近で見るプロレスは大迫力でした。生で見る憧れのブッチャーは想像以上に大きく、その空手殺法に「これがブッチャーか!!」と圧倒されました。
試合が終わり、大満足で会場を後にしようとした時、プロモーターさんに呼び止められました。
「若、ブッチャーに会わせたる。おっちゃんと一緒に控室に行こう」
まさかの誘いに天にも昇る気持ちです。
控室には、プロモーターさんの言葉通り、ブッチャーが待っていてくれました。リング上の荒々しい雰囲気とは違い、普段のブッチャーはとてもやさしく、紳士的な方でした。
控室でブッチャーが「ワカ、ゲンキデスカ?」
当時、プロレスの興行は全国を巡回していましたが、私の住む田舎にやってくるのはせいぜい年に1回くらいでした。プロモーターさんは私が喜んだのを覚えていてくれたらしく、「若がそんなに好きなら、来年もまた呼んでやる」と翌年もブッチャーをブッキングしてくれました。
次の年も試合後、同じように控室でブッチャーに会わせてもらいました。ブッチャーは前年、日本語をまったく話さなかったのですが、驚いたことにこの時は「ワカ、ゲンキデスカ?」と話しかけてくれたのです。この日本の挨拶は、プロモーターさんが「大切なゲストがくるから、覚えてくれ」と教えたんだそうです。
翌日、学校で「俺、ブッチャーと写真を撮ったんやぞ!」と友人に自慢したら、かなり驚かれましたね。
そりゃそうです、知名度が全国区の悪役外国人プロレスラーと写真を撮れるなんて、当時は考えられませんでしたから。
これは完全に組長の息子ならでは、の特権だったかもしれませんね。