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ぼったくりの手口

 歌舞伎町には毒トカゲのような男たちが徘徊している。

 ポン引きとキャッチである。

夜の街・新宿歌舞伎町 ©文藝春秋

 ポン引きは客を店に連れ込んでから、「すいません。次につく女の子が生理になってしまって、別の子なら高くなるんですけど、あと1万円出してもらえますか」とカネをつり上げる。ところがいつまでたっても肝心の女の子がこない。

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「入会料がいるんです。その代わりモデルクラスがきますから」とまたカネを取る。

 1万2000円を女の子に渡せばあとはいくら客から取ってもポン引きの取り分になる。

 ポン引きは歌舞伎町で自由に動いて、客を店に誘い込み、やりたい放題やる。客に女の子をあてがうが、女は手でやるだけで、最後まではやらせない。

 まだ客からむしり取れそうだと踏んだら、「六本木からいい女の子連れてきますから、タクシー代、1万円いただけますか」と吹っかける。

 客は一度財布を開けたら最後、発射できるまで払ってしまう。

 よく見るとポン引きはニコニコ笑顔で話しかけるが、目つきが怖いので、客はついポン引きの言い値で払ってしまう。

 80年代前半、フードルとして一世を風靡したイヴちゃんも、静岡から上京して最初に飛び込んだプチぼったくり風俗店が、影野がバイトしていた店だったという。

 キャッチというのは店専属で契約しているいわばフリーランスの業者である。

 歌舞伎町で何か物ほしそうに歩いている酔客にキャッチが「お客さん、5000円ぽっきり!」と声をかけて店に連れていく。ホステスが客の横につき、鼻の下を伸ばしてグラスを干し、いざ会計になると、10万の請求が突きつけられる。

 このとき、客からぼったくったカネの2割はキャッチにバックされる。

 20数年前、歌舞伎町のぼったくり店に友人が連れ込まれそうになり、私があとを追い、結果的に2人で18万円ぼったくられそうになったことがある。熱くなった相棒をなだめ、両者の間に入った格好になった私は、奇跡的に3万円で切り抜けた。

「その店どの辺ですか? うちの系列店かな?」

「たしか、コマ劇場そばで3階にあった……」

「(小声で)うちに近いなあ」

「『V』という店名だったような……」

「ああ! そこはうちのライバル店」

 稼いだカネは酒と遊びに費やした。

「とにかく遊び好きだから。ゴルフ、野球、アウトドア、女、酒、麻雀、なんでもやります。付き合ってるおねえちゃんは4人」