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杉田裁判官は、厳しい調子の関西弁で尋ねた

 杉田裁判官は、厳しい調子の関西弁で尋ねた。

 裁判官「あなた、重大な事件を起こしたってこと、認識してますか?」

 被告人「はい」

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 女性には暴力を振るっていたが法廷では異様に声が小さい被告人に、杉田裁判官はさらに畳みかけた。

 裁判官「これはねえ、簡単に終わらせることできないよ! お詫びの気持ち、考えなきゃ! どうするか考えてる?」

 被告人「お金……」

 裁判官「お金も当然だけどね! あなた自身、お詫びの気持ち、表すことを考えなきゃいけないんじゃないですかっ?」

 被告人「はい」

 裁判官「次回までにね、どうしたらいいか考えてきてください!」

 次回期日は約1ヶ月後に決められた。杉田裁判官の「考えてきてください」は、本気だと感じた。

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「実は、私もねえ、裏切られたんですよ」

 引き続き同じ法廷、覚せい剤取締法違反(使用・現在は覚醒剤取締法違反)事件の審理。執行猶予中の再犯だった。情状証人として出廷した被告人の勤務先社長が「更生に向かって進んでいると思っていたのに、裏切られました。でも、もう一度信じたい」と語ると、待ってましたとばかりに杉田裁判官は切り出す。 

「……実は、私もねえ、裏切られたんですよ。平成9年、この被告人の覚せい剤の裁判担当したの、私なんですよ。そんときはね、保護観察の執行猶予つけたんですよ。でもそのときも1年で裏切られた。証人はそれでもなお、被告人を信じるんですか?」

 なんと裏切られた者同士だったのだ。それでも証人は被告人を信じるようで「今後もしっかり監督していく。なにとぞ執行猶予を……」と言うが、ここでぬか喜びはさせないのが杉田裁判官だった。こんなことを証人に告げたのである。

「いや、今回当然実刑しかないんですよ。その監督は(刑務所)出てからのことってことで、よろしいですか?」

 私がいちいちびっくりしてしまったのは、判決よりも前に、実刑である旨をこれほどきっぱり告げる裁判官を見たことがなかったからだ。そして今でも、見たことがない。

現代思想 2023年8月号 特集=裁判官とは何か ―家庭から国家まで…法と社会のはざまから問う―

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(※記事内小見出しは編集部作成のものです)