綾瀬はるかは好感度の高い俳優である。先日、今年(23年)1~6月に関東地区の民放5局で放送されたCMに最も長く出演したのが綾瀬だったと発表された。CMには好感度とキャッチーさが大切だ。
新しい学校のリーダーズが歌う『狙いうち』に合わせて、綾瀬はるかが拳銃を撃って撃って撃ちまくる、綾瀬はるかの主演映画『リボルバー・リリー』(行定勲監督)のPR動画も映画の内容はよくわからないながら、綾瀬はるかが銃を撃ちまくる映画なんだということだけは伝わってくる。「バンッ」「バンッ」とにっこりかわいく撃つ姿と、クールな顔で仕留める姿と、どちらが本当の綾瀬はるかなのだろうか。映画を観たり、取材をしたうえで考えた。
腕や足をむき出しで戦うアクションシーン
原作は長浦京の同名の長編小説である。綾瀬が演じる小曾根百合は、幣原機関という組織で育成されたスパイ。57人もの要人を殺害し、「最も排除すべき日本人」と言われた彼女はあるとき、忽然と姿を消して、下町の私娼街・玉の井でカフェーを営んでいた。ときに1924年――大正13年、関東大震災の起こった翌年、百合は再び、リボルバー(S&W M1917)を持って戦うことになる。
最大の見どころは、陸軍1000人とたったひとりで戦うという無茶なアクションシーン。いくら2丁拳銃にしたところで焼け石に水、絶対ありえないと思うけれど、白いドレスを真っ赤に染めて戦場を駆け抜ける姿は問答無用に胸を打つ。綾瀬はるかはこれまで、サイボーグ、女座頭市、特殊工作員、短槍使い、スペンサー銃使いと様々な役でアクションを披露してきただけはあり、最新作でもリボルバーを撃つアクションに合気、列車からの飛び降りまで鮮やかに決めている。
何が無茶かといえば、白磁のような腕や足をむき出しで、戦うのである。ノースリーブ、スカートの撮影では傷が絶えなかったようだが、なぜ、むきだしで戦うのか。
「殺し合いにも身嗜みは大事」と百合を強力な戦闘兵器に育てたボスの言葉に従っているという設定だからである。そんな美学も浪漫があり素敵ではあるが、戦う当人の身になってみろという感じ。アクション映画の撮影では通常、膝や肘など、見えないところにパッドなどを仕込んでいる。でも、今回、腕はむき出し、下半身はスカートで仕込みようがない。衣裳は長袖にパンツ、あるいは着物にしてほしいと相談しなかったのだろうか。
監督の行定勲は綾瀬はるかのことを〈こうしたいと主張しない人〉と、著書『映画女優(ヒロイン)のつくり方』(幻冬舎新書、23年)(正確には聞き書き)で述べている。〈おそらく僕の要望に対して疑問点もあっただろうに、問いただすことはせずに、まずはやってみる。そして恐るべき短時間でクリアしていく〉、そういう綾瀬はるかを行定は高く評価している。この発言は主として、物語のテーマ的なことに関してではあるが、ビジュアル面でも、まずはやってみていることが、映画から伝わってくる。