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「紙の保険証を残せ」の大合唱
このような日本の現状を考えれば、徹底したデジタル化によって行政コストを削減する以外に道はない。それにもかかわらずメディアは、まるで「正義」であるかのように、「紙の保険証を残せ」と大合唱している。
保険証をデジタル化するのは、医療の質を維持しつつ、今後、急速に膨らむ医療費を抑制するためだ。この改革を実現するには、患者が自分の医療情報を管理するだけでなく、医療機関のあいだで電子カルテや投薬情報を共有できる仕組みが不可欠になる。
ここまでの「総論」は誰もが同意するだろうが、問題は、患者が紙の保険証を使っていれば病院はデジタル化する理由がなく、病院がデジタル対応していなければ、患者は紙の保険証のままでいいと考えることだ。
メディアは「マイナ保険証に切り替えた利用者の半数以上がメリットを感じていない」とさかんに報じているが、これはマイナ保険証の問題ではなく、デジタル化を拒んでいる医療機関の問題だ(同様に、マイナカードを使った証明書の誤交付は、システムを開発した富士通の問題だろう)。