日本社会が直面する“人口減”と“高齢化”の脅威
デジタル化は市民の利便性向上だけでなく、政府のコストを減らすことも目的としている。社会が多様化するにつれてひとびとが行政に求めるサービスは増えていくが、人材・予算などの資源は有限だ。非効率なやり方を続けていれば、いずれ行き詰ってしまう。
人類史上未曾有の超高齢社会を迎えた日本の最大の課題は、高齢者が多すぎることだ。政府の人口推計では、2040年には年金受給年齢である65歳以上が全人口の35%と3人に1人を超える。それにともなって年金、医療、介護などを合わせた社会保障給付の総額は190兆円に達すると見込まれている。
20年後の人口を1億人、現役世代を5000万人とすれば、単純計算で現役世代1人あたりの負担は年400万円弱になる。このような社会が持続可能かは、すこし考えれば誰だってわかるだろう。
23年度の国家予算約114兆円のうち、(税から支出される)社会保障費が32.3%、国債の利払い・償還にあてられる国債費が22%で、合わせて5割を超えている。しかもこれらの経費は、高齢化や国債発行増にともない毎年確実に増えていく。それに対して「大幅増額」の防衛費は、予算全体の6%弱だ。ロシアのウクライナ侵攻以降、「中国の脅威」が声高に唱えられているが、日本社会にとっての最大の脅威は人口減と高齢化の圧力なのだ。
1950年には65歳以上1人に対して15〜64歳人口が12.1人だったが、いまから約40年後の2065年にはそれが1.3人になると見込まれている。1人の現役世代が、子育てと親の介護をしながら、さらに高齢者1人を支えなければならない。
いまの若者はこのことをよく知っており、将来の経済的な不安が少子化の最大の原因になっている。これでは、「異次元の少子化対策」をしたところでなんの効果もないだろう(ただし子育て支援は必要だ)。