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メディアが触れない「マイナ問題」の本質
来年秋に紙の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化するとの方針が高齢者の不安を引き起こし、支持率低下に焦った岸田首相は、マイナ保険証を持たない人に一律に交付する「資格確認書」の有効期限を5年に延長すると発表した。混乱の原因には政府の対応の稚拙さがあるものの、この間の「マイナ問題」の報道はあまりに偏向しているのではないか。
メディアが大きく取り上げた事例に、公金受取口座の誤登録がある。マイナカード普及を目的とした最大2万円分のポイント付与キャンペーンでは、口座情報の登録が条件とされた。そこで自治体が登録を代行する支援窓口を設けたところ、そこに市民が押し寄せて現場が混乱し、別人の口座を誤って登録したケースが900件あまり判明したという。
これはずいぶん批判されたが、メディアは本質的な「問題」に触れていない。それは、マイナンバーと銀行口座との紐づけは、本来、マイナポータルでユーザー自身が行なうようになっていることだ。
だとしたら自治体は、「できない」高齢者の面倒を見るのではなく、マイナポータルの使い方を説明した冊子を配るだけでよかったのではないか。ほとんどの国民は、自分で手続きしているのだから。
政府が推進する行政のデジタル化の目的は、市民が窓口に行かなくても行政サービスを受けられるようにすることだ。そのための基幹インフラがマイナンバーであるにもかかわらず、マイナポイントのために窓口に高齢者が殺到したのは皮肉というほかない。