堺雅人演じる商社マンの1億ドルの誤送金事件を発端に、モンゴルと日本で大冒険が繰り広げられる日曜劇場のアベンジャーズドラマ『VIVANT』(TBS系)や、賛否両論を呼んだ『3年A組』のスタッフが再集結した『最高の教師』(日本テレビ系)、さらには野島伸司の5年ぶりとなる地上波ドラマ『何曜日に生まれたの』(テレビ朝日系)など、今期もさまざまな話題作が並ぶ中、フジテレビ月9『真夏のシンデレラ』がひときわ異彩を放っている。
久しぶりの「月9恋愛ドラマ」に注目が集まっていたが…
月9がキラキラした恋愛ドラマを放送していたのも数年前……という話は何度かしている。ここ最近はミステリー・裁判・医療のローテーションがつづき、恋愛ドラマは約5年半ぶり。さらにオリジナル脚本となれば、2016年7月期の『好きな人がいること』以来だ。
2022年10月期に放送された『silent』(フジテレビ系)の大ヒットを受けてか、2022年にフジテレビヤングシナリオ大賞を受賞したばかりの新人脚本家を抜擢。休養していた売れっ子若手俳優・神尾楓珠の復帰作で、メインキャストの一人である水上恒司にとっては岡田健史から改名後初の民放ドラマだったりと、放送前からなにかと注目されていた。
物語は真夏の湘南を舞台にした男女8人の恋愛群像劇になっている。湘南に住むサップインストラクターの夏海(森七菜)、美容師アシスタントの愛梨(吉川愛)、クリーニング屋で働くシングルマザーの理沙(仁村紗和)が、東京からやってきた大手建設会社社員の健人(間宮祥太朗)と研修医の修(萩原利久)、司法浪人生の守(白濱亜嵐)に出会い、それぞれの拠点は異なれど、グループで仲を深めていく。
フジテレビの夏ドラマといえば、男の友情を描いた『ビーチボーイズ』(1997年)や、真心ブラザーズの同名曲から着想を得た『SUMMER NUDE』(2013年)などが挙げられるが、『真夏のシンデレラ』の第一話を見た私の頭に浮かんだのは、そのどちらでもなかった。
そこには『テラスハウス』(フジテレビ系)や『バチェラー・ジャパン』(Amazonプライムビデオ)シリーズなどの恋愛リアリティーショーで幾度か目撃した、自身が持ちうる限りのロマンチックさをかき集め、精一杯捻り出してつむぐ愛の言葉みたいな生々しさや気恥ずかしさと、『東京ラブストーリー』(1991年、フジテレビ系)を彷彿とさせるバブル全盛期のコテコテ王道演出という、まったく別の要素が共存していたのである。