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勉強中の欲求は常にあった

諸橋 だから、予備校に通いましたし、1回目の受験は落ちました。でも、コツコツ勉強を続けて、生活も朝型に変えて、2回目の受験はうまくいって2009年9月に合格しました。合格者の平均年齢が31歳で、僕は当時33歳だったんですよ。なんか、世間一般の同世代に追いついた気がして、自信になりましたね。

――勉強中は覚醒剤への欲求は出てこなかったのですか。

諸橋 常にありましたよ。勉強していて蛍光ペンを見ると、蛍光インクのリフィルが、打ったときに血が混ざる注射器に見えてきちゃって。思わず、蛍光ペンの先を腕に押し付けてました。実際、何回かスリップ(再使用)しちゃってましたから。

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 電車に乗って、吊り革を掴んでる人の腕が筋肉質で血管が浮き出たりすると「ああ、打ちたいな」「この血管に、こうプスッと刺したらいいだろうな」なんて考えちゃったりね。

 さすがにいまは、蛍光ペンを押し付けたり、他人の腕なんて見ないですけど。

 

――打ちたくなったときは、東京へ行くのでしょうか。

諸橋 いわき市では買えないので、東京に出るんです。最後のスリップは、1回目の司法書士試験のとき。試験を終えた解放感とか「自分へのご褒美」みたいなのもあって、試験の2、3日後に我慢できなくなっちゃって。

 だけど、やってしまったあとの罪悪感がとてつもなくて。執行猶予の判決をもらって、頑張ってシャブをやらないようにしていたわけですから。「やっちゃった」ですよ。自己嫌悪に陥るあまり、さらにシャブに手を出したくなるんです。ただ、僕の場合はポン中や売人との関係を断っていたので、そこで踏みとどまれましたけど。

朝型の生活を守る、携帯を持たない、ギャンブルしない

――司法試験は、どこかの大学に入って挑んだんですか。

諸橋 僕が受けるタイミングで司法試験の制度が変わって、大学だけじゃなく、ロースクール(法科大学院)も卒業しないといけなくなったんですよ。でも、大卒程度の学力があると認められたら受験できるロースクールがあるのを聞いて探し回って。

 で、東京に出て、4年間でロースクールの受験資格を得られる専門学校に一旦通ったんですけど、受験資格を認めてくれるロースクールを見つけたので通うのをやめました。朝型の生活を守る、携帯を持たない、ギャンブルしないっていうルールを定めて、予備校のネット講義を受けて、ひたすら答案練習を繰り返してました。

――1回目の司法書士試験後が最後のスリップとのことですが、そのあとは本当にスリップしなかったのでしょうか。