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「やめられるわけねえだろ」アンチの存在が強い動機付けに

諸橋 シャブに手を出さなかったのは、アンチのおかげですね。僕、司法試験に挑むにあたって、ブログを開設したんですよ。もともと受験の情報収集のために開いたんですけど、「チンピラから司法試験を目覚します!」と宣言して勉強の進捗や昔のことを隠さずに報告してたら炎上して、2ちゃんねるで「こんなシャブ中、受かるわけねえだろ」「シャブやめられるわけねえだろ」とかメチャクチャ叩かれて。

 それもあって「絶対にやってたまるか」と固く誓いました。アンチの存在が、僕史上最高に強い動機付けになりましたね。おかげさまで関西大学の法科大学院に受かって、2013年に司法試験に一発で合格しました。

 

 

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――前科があっても弁護士になれるものなのですか。

諸橋 なれます。僕の場合は執行猶予なんですけど、執行猶予が終わると刑はなかったことになって、前科にはならないんです。たとえ実刑で刑務所送りになったとしても、刑の執行が終わって10年が経てば刑自体は消失するので、それから弁護士を目指せます。

――弁護士になる前に司法修習がありますけど、そこで経歴を突かれたりは。

諸橋 最高裁に呼び出されて、裁判官らしき人と面談しました。「クスリはやりたい?」と聞かれて「いまもやりたいけど、7年の苦労を考えたらやれないです」って答えて。最終的には「すごいね。君みたいな修習生は初めてだ」と言ってもらいました。

一番嬉しいのは母に親孝行できたこと

――ヤクザと弁護士、両方の金バッジを付けたわけですけど、なにか違いはありますか。

諸橋 弁護士のバッジは、造幣局製なんで高級感ありますね。意匠が凝っているというか、日本辯護士連合會員章ってのと登録番号が刻印されていて。

 でも、僕はバッジをもらって1週間もしないうちに、飲み屋を回ってるうちに失くしちゃって。勤めていた法律事務所から怒られましたね。

――弁護士として働き始めて10年弱経ちますが、いかがですか。

諸橋 母に親孝行できたのが一番嬉しいですね。僕がヤクザになって帰ってきた時は本当にどん底だったと思うんですよ。東京で働いていると思ったら、シャブ中になって逮捕されるなんて。

 たくさん迷惑をかけて悲しませてしまったのでこうやって恩返しができているのは本当に満足しています。それに僕のことを理解してくれる妻にも出会って子どもにも恵まれたので。これからは社会貢献していきたいですね。

 

写真=石川啓次/文藝春秋