犯罪が起こりやすい場所を見破る“2つのポイント”
小宮 そうです。犯罪者は手あたりしだいに犯罪を実行するのではなく、「うまくいきそうだな」と思う場合でのみ、犯罪をする。欧米では50年ほど前に「犯罪機会論」が導入されて、何度も社会実験が行われてきました。その結果、犯罪が起きやすい場所には大きく2つのポイントがあることが分かっています。
それは、「入りやすく」「見えにくい」場所です。
まず、「入りやすい」場所ですが、簡単に相手に近づくことができて、犯行が終わったらすぐに立ち去ることができますよね。例えば、車を使った誘拐は、ガードレールのない道で起きやすい。 ガードレールがあるだけで、「近づきづらいな」という心理が働いて、犯罪をしようとするハードルが一気に高くなるんです。
「見えにくい」場所はイメージしやすいかと思いますが、周囲の視線が入らない場所ですね。目撃されるリスクが低いため、犯罪者は安心して犯行に及びます。公衆トイレの個室や、高い塀が続く道、田んぼ道などが挙げられます。
また、心理的に「見えにくい」という場所にも注目してほしいです。例えば、ゴミが散らかっていたり、落書きが放置されていたりするような公園なども、犯行場所として狙われやすい。近所の人があまり目を配っていない場所であると認識して、犯罪者に「もし犯行を目撃されたとしても見過ごされるのでは」と感じさせてしまうのです。
ニューヨークの地下鉄で犯罪が急減
――なるほど。実際に、「犯罪機会論」を取り入れることでの防犯効果というのは実証されているのですか?
小宮 多数のデータで成功例が報告されています。有名なのはニューヨークの地下鉄で犯罪が急減した例ですね。1970年代くらいは「地下鉄に乗れば、強盗に遭う」と言われていたんです。当時のアメリカでは「犯罪原因論」が中心で、ちっとも犯罪の件数は減らなかった。
そこで、解決策として「犯罪機会論」を持ち出したのが、アメリカの犯罪学者、ジョージ・ケリング博士でした。彼は、「割れ窓理論」を提唱した人でもあります。これは割れたガラスをそのままにしていると、さらに割られる窓ガラスが増え、いずれ街全体が荒廃してしまう……という、「犯罪機会論」のひとつです。