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日本の公園やトイレは、“世界一キケン”!

小宮 例えば、海外の公園には遊具を「大人向け」と「子ども向け」ではっきりとエリアを分けています。もし見知らぬ大人が「子ども向け」エリアに入ってきたら、違和感を抱くことができます。「入りにくい場所」をつくることで犯罪を減らすつくりにしている。これを「犯罪機会論」を用いた「ゾーン・ディフェンス」と呼んでいます。

子どもが遊ぶための遊具ゾーンがフェンスで囲まれているイギリスの公園(小宮教授提供)

 どこにでもある「見えにくい」場所のひとつ、公衆トイレを例にみてみましょう。海外のトイレでは、男女のトイレの入り口を離していたり、多目的トイレも1つではなく、男女別々に作られています。また、完全な密室にならないように、足元が空いているところも多く、様子がおかしければ外からわかるように設計されています。

 犯罪学の観点からみれば、「ゾーン・ディフェンス」がない日本の公園や、男女の入り口が同じの公衆トイレは、構造上、世界で一番危険であると思っていいです。

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足元が空いているアメリカのトイレ(小宮教授提供)
韓国のトイレ。被害に遭いやすい女性のトイレは、奥まった入りにくい場所に配置されている(小宮教授提供)

 

人通りが多くても、防犯カメラがあっても、安心はできない

――たとえば、家族連れがよくいく場所の一つですが、人も多く、防犯カメラも設置されているようなショッピングモールなど屋内施設も危険なのでしょうか? 

小宮 長崎の家電量販店で男児が誘拐される事件(2003年)がありましたが、当時お店にはお客さんがたくさんいたそうです。でも、警察が捜査をしても、全く目撃情報がなかった。居合わせた人は皆、商品に意識が行ってしまっていて覚えていないんです。

 もし、子どもが誘拐される瞬間に気がついたとしても、「その人は大丈夫? 知り合いなの?」と通りすがりの人が介入してくるというケースはまずありえません。これは、「傍観者効果」というもので、「ちょっとおかしいな、一緒にいる人は、親じゃないのかな?」と違和感をもったとしても、見過ごしてしまうのです。

――「犯罪機会論」は欧米では50年前くらいから提唱されているとのことでしたが、他の国ではどうなのですか。

小宮 全世界で浸透してきていると思います。一番進んでいるのがイギリスとアメリカ、その次ほどにオランダやカナダ。アジアでは、韓国やシンガポールがちょっと前を走っている感じですかね。

 日本が子どもに向けた防犯対策は未だに「防犯ブザーを渡す」「大声を出す練習をする」「走って逃げる訓練をする」ですが、もう海外ではやっているところはほぼありません。こうした対策は「マンツーマン・ディフェンス」といって「襲われたらどうすべきか」という考え方です。

「マンツーマン・ディフェンス」と、そもそも「襲われないようにどうすべきか」という「ゾーン・ディフェンス」。どちらを選ぶことが、犯罪を減らすために効果的と言えるでしょうか。