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「怪しい人についていっちゃダメだよ」では子どもを守れない? 犯罪学の専門家が語る“本当に効果的な声かけ”とは

立正大学教授(犯罪学)・小宮信夫さんインタビュー

genre : ライフ, 社会, 教育

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「勝ち目のない」防犯対策――それでも、「日本は安全」?

――「マンツーマン・ディフェンス」は、小さくて力の弱い子どもは特に難しいですよね……。

小宮 そうですよね。犯罪機会論が普及していない日本では、子どもが一対一で犯罪者と対決することになる。そうなったらもうほとんど勝ち目はありません。犯罪者が犯行を諦める“景色”がもっと日本に増えてほしいですね。

――例えば国内で、小宮先生が注目している施設などはあるのでしょうか。

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小宮 町内会などで「ホットスポットパトロール」をやっている地域があるそうです。「ホットスポット」というのは「入りやすく見えにくい」場所のことで、そこを重点的にパトロールしようという犯罪機会論を応用した取り組みですね。

 藤沢市の全小中学校では、校門から受付までの道のりにラインが引かれています。これはゾーニングの一つで、普通の来客であれば引かれたラインを辿って歩きますよね。そこから離れて歩く学外の人間がいたら、「あの人の行動はおかしくないか?」と思ってもいいという指標になります。

藤沢市(小宮教授提供)

――3月には先生のお話がNHKで紹介され、インターネット上でも多くの意見がみられました。「犯罪機会論の認知度をもっと上げるべき」という意見もありましたが、なかなか「犯罪機会論」が浸透しないのは、なぜなのでしょうか?

小宮 私の印象ではありますが、固定観念というものが強くあるんだと思います。「日本は安全」「今までこれでうまくやってきたのだから」ということで、新しいシステムを取り入れようという意識にはなかなかならないのではないでしょうか。「海外のやり方をなんでも取り入れるべき」というのではなく、犯罪機会論はこれまで多くの国で取り入れられ、効果も実証されている考え方です。

 NHKの記事が出た後、いただいた多くのご意見を聞いて強く感じたのは、子どもをもつ方は本当に真剣に「どうしたら犯罪に巻き込まれることなく、自分の子どもを守れるのか」と考えておられるのだなということでした。他人事ではなく、自分にとって大切なお子さんが犯罪に巻き込まれないためにできることは何なのか。より多くの人に考えてみていただければと思っています。

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