変わらぬ柱であること
チーム1位の2ケタ勝利を記録している今年のエース戸郷投手は、先輩の緊急登板を見て、
「熱いものがありました。いろんな中でもまとめるのがエースなんだなと思いましたね」
と感銘を受けたそうです。
そして脂が乗った23歳はこう続けます。
「ゼロで抑えることが一番ですし、完投目指して頑張りたい」
若きエースである戸郷投手は、自チームの偉大な先輩の代名詞の1つでもある完投を今季リーグ1位の3度記録しています。
そんな後輩に対して菅野投手は、
「ここ数年働けていない僕が言うのもあれですけど、彼にはうるさいなと思うことも言っています」
とコメントしています。
「ここ数年働けていない」という自己評価ですが、今年こそ3勝ですが昨年は2ケタの10勝を記録しています。変わらぬ自分への厳しさを垣間見せると同時に、到底真似できない一面に気づかされます。
「ここ数年働けていない」と、自分で思いながら、好成績を上げ続ける後輩に口酸っぱくアドバイスを送れる点です。
自分が絶好調の時や自分より成績が上がっていない者に対しては、年長者であれば気軽にアドバイスもできると思います。
僕自身デビューから14年目を迎え、後輩からアドバイスを求められることもありますが、あまりスッと答えられません。ましてや自発的に後輩に気づいたことを伝えるのは、なかなか勇気がいることです。
菅野投手のような圧倒的な実績を持っていれば容易なのかもしれないですが、誰にでもできることではないと思います。
栄光の世界一を勝ち取った侍ジャパンのダルビッシュ有投手のような役割も担いはじめているのかもしれません。その姿はまさに柱、いや大黒柱そのものです。
ドラマはどこに向かうのか
今シーズンの菅野投手に、僕は今まで以上に惹かれています。
苦しいシーズンは、逆境に入ってきました。その中で見せる変化に希望が宿り、その中で示すチーム愛に生き様が映っているからです。
今シーズンの残り試合、そして来季以降のシーズンで菅野投手がどのような投球を見せてくれるのかが楽しみで仕方ないのです。
完全無欠な完投完封を連発するスーパーエースの投球も見たい。
試合を作り、6~7回まで投げ後続に託しチームの勝利にはしゃぐベテランの投球も見たい。
打ち込まれ、悔しさを浮かべながらマウンドを後にする姿だって目に焼きつけたいのです。
どのような形であっても、マウンドに立ち続ける姿に勇気をもらい感銘を受けると断言できます。
逆境の今日をどう過ごすか。
チームのために緊急登板をした菅野投手の姿を心に焼きつけ、自分もまた苦しい時にチームのため、仲間のために自然と体が動く人間になりたいと心が奮い立ちます。
菅野智之というドラマを堪能し、心を震わせられる幸せに感謝が尽きないのです。
これからもこの至福の時が続くことを願わずにはいられません。
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