新聞社を2週間で“スピード退社”した
2人目は、とある新聞社に入社したものの、わずか2週間で退社したという藤谷葉月さん(仮名)。
地方から東京の大学に進学し、文章を書く仕事を志して就職活動を行った。その結果、地元のブロック紙から内定をもらったのだが、卒業前にはすっかり就職する気を失っていたという。
「内定をもらえたことは嬉しかったですし、両親もとても喜んでくれました。でもいざ地元に戻ることを考えた時に、やっぱり東京にいたくなったんです。あまり地元にいい思い出はなかったし、東京でいろんな人に出会えたことはすごく刺激的だったので、まだ帰りたくはないなと思ってしまって」
藤谷さんは大学の先輩から紹介してもらった編集プロダクションからも内定を得て、新聞社の内定を辞退する気持ちを固めていった。最大の問題は、両親からの理解を得られなかったことだった。
両親に内定辞退を伝えると…「あんたバカじゃないの?」
「両親にはなかなか本音を言い出せなくて……。入社まで1ヶ月を切ったときにようやく、『やっぱり内定は辞退する。地元には帰らない』と伝えると『あんたバカじゃないの?』と。全く受け入れてもらえませんでした」
実は藤谷さんはこの時期、就職へのストレスが爆発して、精神的に不安定になっていたという。
「リストカットに走ったり、飲み歩いては下剤を飲んだり吐いたりを繰り返すという生活をしていました。卑怯だとは思いながら、両親にリスカの跡を見せて『地元に帰るのは不安』『今の環境から離れたくない』と必死に説得しました」
両親は、「死ぬくらいなら何でもいい。けど、せっかく地元のいい企業に受かったのに1回も出社しないのはもったいない。せめて研修期間だけでも行ってくれ」と言い始めたという。
「はじめは『そんな失礼なことはできない』と拒否しましたが、両親はなかなか引いてくれませんでした。そのうち『おばあちゃんが、せっかくあんたが地元に戻ってくると思っていたのに、来ないって聞いて泣いてるよ』とか、『お父さんはあなたの現状を聞いて具合が悪くなり、仕事を休んでいます』といった連絡が来るようになった。仕方なく研修期間だけは行くことに同意しました」
地元への交通費や引っ越し費用はすべて両親が負担。藤谷さんは、働く予定だった編集プロダクションに入社時期を遅らせてもらうよう交渉し、新聞社の研修に参加した。