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会社には伝えなかった“本音”

「引き留めるためなのか、人事の方はいろいろ話してくれました。『まだ研修期間中だけど現場に出たらもっと勉強になる』とか、『もっと違う面白さややりがいがあるよ』みたいなことを言われました。けど、私としてはもう辞めるって決めていたので、何も響きませんでしたね。

 理由も聞かれましたが、『雰囲気が合わないと思いました』とか、フワッと答えたと思います。『研修の上司が嫌すぎて』とも言いづらいし、言っても何かが変わるわけでもないしなあ、と」

 入社した企業にそれほど執着が無かったことも、すぐ辞める決断をした一因だったかもしれないという。

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「私は就活でそんなに苦労しなかったんです。4年生になって部活と同時進行で就職活動をしたんですが、体育会に所属していたことは営業系で印象がいいんですよね。

 夏頃に資料を集め始め就活サイトに登録して、いくつかの企業にエントリーしましたが、志望動機に『この競技を何年間続けて、これだけ頑張ってこんな実績を残しました。その経験をこの企業でも活かしたいです』みたいなことを話せば十分で、複数の内定をもらいました。その中から希望の業種を選んだという感じです」

※写真はイメージです ©iStock.com

両親や友人たち、周囲の反応は?

 入社初日の“スピード退社”について両親や友人たちからは何も言われなかったのか。

「両親からはそんなに強くは言われませんでしたね。母は『あんた、辞めてどうするの? ニートはだめよ』くらい。父からは『何のために大学へ行かせたと思ってんねん』とは言われましたが、私が人の話をあまり聞かない性格だと知っているので、とりあえず言うだけは言っておいたという感じでした。友達はもっと緩くて『あー、そう』と驚かれもしなかった。

 大学の同期でも入った会社をすぐ辞めた子がいたし、ハローワークに行った時にも私と同じような若い人が結構来ていましたね」

 愛川さんは退職後すぐに、学生時代にバイトをしていたネット回線事業の仕事を再開した。その後、いくつかの仕事を経験する中で興味を持った映像系の仕事を始め、現在は東京で暮らしている。

「辞めたことはまったく後悔していません。今の仕事はまだ何とか食べていけるくらいですが、それでも最初の会社で我慢しながらやるよりずっと楽しいと思う。辞めて正解だったと思っています。

 大学の時って、みんな『自分に何が向いているか』『何がやりたいか』とか色々考えるじゃないですか。けど結局、やってないから実際のところは分からないし、やってみてはじめて分かることも多い。入った会社が自分に合わないと思うのなら、決断は早い方がいいですよね」