毎年のように報告される「新卒社員が入社直後に退職してしまった」という企業の嘆き。大卒の若手社員の3割が3年以内に離職するという状況が近年も続いている。(厚生労働省発表「学歴別就職後3年以内離職率の推移」)
就職活動を乗り越え、望んで入ったはずの会社をなぜあっさりと辞めてしまうのか? 実際に、新卒で入社した会社をすぐ辞めてしまったという2人の女性に話を聞いた。
◆ ◆ ◆
バリバリの体育会出身だったが、わずか1日で退社
1人目は現在20代後半の愛川みさとさん(仮名)。関西の大学を卒業し、全国にチェーン展開をしている飲食店業界の企業に入社したが、その初日に「なんか違うな」と感じ、わずか1日で退社してしまったという。
「初日に入社式と新人研修があったのですが、この1日目で、『あ、違うわ』と思ってしまったんです。その日にすぐ、辞めることを決めました」
いったい何が引っかかったのか?
「新入社員が集められると、偉そうな中年の男性社員が現れて、『起立!』と大声で号令をかけはじめたんです。私たちが立つと、『反応が遅い』とか『姿勢が悪い』とか怒られて、何回も何回も起立と着席を繰り返しさせられました。私は大学までずっと体育会系だったので理不尽な指導っていうのは何となく分かるんですけど、それでも研修という名目で意味の分からないことをやらされている気がして、すごく嫌でした」
“ダメ出し”を受けて「ちょっと無理かな」
いわゆる「軍隊式研修」「圧迫研修」と呼ばれる類の研修だったのだろう。話を聞く限り、そこまで極端にブラックなものではなかったようにも思えるが、その後の研修も愛川さんにとっては苦痛な時間だったという。
「いくつかのグループに分かれてレクリエーションのような伝言ゲームや、プレゼン大会がありました。ここでも男性の担当社員が、『チームワークをもっと大事にしてやれ!』『声が小さい!』とかいちいち厳しく言ってくるし、プレゼンの講評も偉そうなダメ出しばかり。同期入社は100人弱くらいだったと思いますけど、周りの子たちもびっくりしていましたね。それでもう、ちょっと無理かな、と」
愛川さんは大学ではバリバリの名門体育会出身で、一時は本気で実業団チームに行くことも考えたレベル。その経験から、ある程度打たれ強い性格だと思っていたが、会社の指導方法への違和感は拭えなかったという。