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「彼らは‟野球という学問”の研究者」《107年ぶり甲子園優勝》慶応高・美白王子、清原の次男らに受け継がれる「知の力学」とは…

「彼らは‟野球という学問”の研究者」《107年ぶり甲子園優勝》慶応高・美白王子、清原の次男らに受け継がれる「知の力学」とは…

source : 週刊文春Webオリジナル

genre : エンタメ, スポーツ

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「現役OB関係なく、慶応野球部の関係者はみな“野球的おしゃべり”なんです。野球について悩み、語り合うことを面倒くさがらず、むしろ楽しみながら、自分たちの野球を深め合っているように見えます。

丸田湊斗選手 ©時事通信社

 慶応高校は“エンジョイ・ベースボール”を掲げています。これは単に『笑いながら野球をする』ことだと誤解されることがありますが、決してそうではない。

 もちろん、試合で好プレーが生まれた時や、得点が入った時は、素直に喜びを表現しますが、本質はそこではない。森林監督もダグアウトで選手たちが喜んでいる時でも一緒になって笑ってないでしょう。慶応がいうエンジョイとは苦しい場面や相手の健闘も含めて、ベストを尽くしながら、主体性を大切にして、野球そのものを楽しむということなんです」

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指導者と選手が一緒に最適解を考える

 慶応高校はもう一つのモットーとして、“シンキング・ベースボール”、つまり「考える野球」を掲げる。彼らが目指す“自ら考える野球”は、常に会話とともにあり、その延長線上に選手たちの笑顔があるのだという。

「今までの多くの野球部は上意下達で、監督やコーチからいただいた“ありがたい理論”を聞き入れて、個々人が指導者の言葉に黙々としたがって練習するのが常でした。選手同士が会話をすると、私語禁止と否定されてきたようなところがあります。

 ところが慶応野球部は違う。選手たちが既成の論理を疑うところから始まり、そこから語り合いが生まれるんです。しかも彼らは結論ありきで話さない。自らが立てた仮説や推論を互いにぶつけ合いながら、そして相手の考えを聞きながら最善の形を見つけようとするんです。指導者もその理論を否定したりしません。むしろ一緒になって最適解を選手と考える。まさに彼らは‟野球という学問”の研究者のようなところがあるのです」(同前)

アメリカの野球の考え方を取り入れ、試行錯誤してきた歴史も

 実際に野球部を指導している森林監督の指導方法にも、工夫がみられるという。

「監督は『絶対に怒鳴らない』と。命令に従わせるだけでは自主性は育たないので、練習中に、声を荒げないように拡声器を使って選手と話しています」(高校野球担当記者)