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地方出身の若き歌舞伎町ホストが語る「夢と現実」

ホストクラブの今 後編

2018/03/17
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「ホストになったのは、親父を見返すため」

 陽虎は、北海道の紋別の出身だ。

北海道・紋別出身の陽虎

 小学校4年の時、親の離婚にともなって父親のもとに引き取られた。だが、父親は責任を持って陽虎を育てることをせず、ある日、児童養護施設へつれて行って、そのまま預けてしまった。以来、一度も面会には来なかった。

「なんでだよって思いました。施設に行くことも、預けられることも聞いてませんでしたから、捨てられたって感じた。施設には、誰一人として知らない幼稚園児から高校生までの子供が70人くらい住んでいました。人間関係はうまくいきませんでしたね、大人とも子供とも。それで一時期グレた時もありました」

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 高校に進学したが、施設での暮らしにはまったく馴染めなかった。そして陽虎は高校2年の時に中退を決意する。

 学生でなくなると施設にはいられないので、友人のアパートに転がり込んでカラオケ店でバイトをはじめた。だが、ここでも人間関係が合わずに辞めてしまう。

 次に、彼は別の施設時代の友人を頼って上京。彼が働いていた携帯会社で働きはじめるも、結果は同じだった。仕事を辞め、もう北海道に帰ろうか、と考え出した。そんな矢先に、見つけたのがホストの求人だった。

「もともとホストには興味がありました。北海道に帰ろうと思っていた時に、ホストクラブが配信している動画中継なんかを見ていたら、だんだんと一度でいいから働いてみたいと思うようになった。それで自分の意志で応募したんです」

 19歳だったが、酒さえ飲まなければ、ホストとして雇ってもらえる。とはいえ、店側にとってはリスクある採用だったはずだ。それでも雇ったのは、陽虎にそれ以上の可能性を見出したからかもしれない。

「ホストになったのは、親父を見返すためなんです。親父には会ってないけど、連絡先はわかってるし、たまに連絡をとることもあります。だから、歌舞伎町のホストクラブで有名になって、親父をアッと言わせたいんです」

 陽虎の胸には、児童養護施設に置き去りにされた過去が今なお鮮明に残っているのだろう。だからこそ、父親を見返してやりたいと本気で考え、下積み生活を送っているのだ。

 店が19歳の彼を雇ったのは、そうしたハングリー精神を読み取ったからかもしれない。