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「成り上がり」は昔の話

 陽虎と友夜。2人の若いホストの言葉を聞いていて感じるのは、一時代前のホストのように「成り上がる」というような気概を持ってこの世界に飛び込んできたわけではないことだ。それぞれ若くして心に深い傷を負った経験があるとはいえ、手塚が言うように、まさにファッションやバイトの延長でホストになっている。

 女性客も同じように変化しつつある。ホストクラブはホスト主導で女性をどんどん引っ張っていくイメージがあるが、むしろ翻弄されているのはホストの方だとか。

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 友夜は語る。

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「うちでは自己アピールの動画を配信してお客さんをつかむんですよ。お客さんも動画を見て『この子がいい』とか考える。僕にしてみれば、ネットで知ってくれたお客さんを店につれてきて指名してもらわなければならないので、とりあえず『店に来なくていいから食事だけしよ』って呼び出してごちそうする。うまく気が合えば、指名してくれるわけです。でも、ほとんどの場合、こっちが食事だけおごって終わりなんです。店に来てくれるのは4人に1人くらいで、あとは帰っちゃう。おごっても全部結果につながるってわけじゃないんです」

一人前になるまでの苦しい日々

 これだけホストクラブが増えれば、ホストの方も自腹を切ってでも客をつかまえてこなければならない。だが、相手がごく普通の学生やOLであれば、そうそう遊ぶ金はない。逆に、ご飯だけおごってもらってサヨウナラというケースも少なくないのだとか。ホストの側がいいように利用されることもあるそうだ。

 手塚は言う。

「一人前のホストになれば、毎晩のように指名がつきますが、それまでは結構大変です。女性客のパシリにならなきゃいけない時代もある。それを何とか乗り越えれば、一人前のホストになれるんですけど、その間はまったくお金もないし、先輩にもあれこれ命令されるし、苦しい日々がつづくんです」

 

 陽虎もまたよくパシリにされるそうだ。そのぶん、発散の方法も身に着けている。

「僕のストレス解消方法は、一人カラオケです。一人でカラオケ行って歌いまくる。そうやってがんばってます」

 何が何でも指名をとって、一生暮らせるだけの大金を稼ぐ。今のホストクラブにはそんな野望が薄れる一方で、若い男女が遊びの中の駆け引きで楽しめる場となりつつあるのかもしれない。

 ただ、それはそれで新しいホストクラブの世界として、だんだんと世の中に認知されていくのだろう。

写真/末永裕樹(文藝春秋)