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地方出身の若き歌舞伎町ホストが語る「夢と現実」

ホストクラブの今 後編

2018/03/17
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被災して「すごい悲しいこともあった」

 友夜は、東日本大震災の被災者だ。生れは、岩手県大槌町。大津波によって町の中心地は壊滅、1200名以上の犠牲者を出した。

岩手県大槌町出身の友夜

 当時、友夜は高校1年。高台にあった高校にいて間一髪で被害を免れた。だが、自宅は浸水し、町は見渡すかぎり瓦礫と灰で覆われた。その時の記憶をこう語る。

「周りの同級生の家族さんとかが亡くなって、すごい悲しいこともあった。町には遺体がそこらへんにある中で、自分としては、あっ、このままもう終わるんじゃないかなって思った」

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 こうした体験をして震災を生き延びたことで、友夜は故郷に対する思いを膨らませ、地元の復興に携わる仕事につきたいと考える。そんな時に縁があったのが、東京のオイスターバーでの仕事だった。大槌町では牡蠣の養殖が行われていたことから、この店で腕を磨けば、いつかは地元に貢献できるのではないかと思った。それで高校、専門学校を経て、東京のオイスターバーに就職した。

 しかし、職場の人間関係に適応できなかった。友夜は間もなく仕事を辞め、客と1対1で話す仕事をして経験を積みたいと考え直した。それで浮かんだのがホストクラブの仕事だった。

 

 彼はホストのスカウト会社が運営している求人サイトへ登録してみた。そこで紹介されたのが、手塚のグループの店だったという。

「今はこの店で頑張って、ゆくゆくは大槌町に帰りたいと思ってます。向こうでなんかバーとかカフェみたいな店をつくれたらいいなって。音楽が好きなんで、そういうこともできたらいいと思ってます」

 こう語るように、友夜の復興への思いはブレていない。ホストとして歌舞伎町に身をうずめるより、接客の経験をつんで故郷で復興にかかわりたいと考えているのだ。こういうところが、今のホストらしいところなのかもしれない。