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打つ時にも痛みが出るようなら、かなり危険だ

 トミー・ジョン手術をこれまで700件以上担当した慶友整形外科病院の古島弘三医師にも話を聞いた。

「大谷選手も人間ですから、無理をさせすぎたのではないかと思います。そもそも二刀流で活躍できていること自体が奇跡に近いというなかで、シーズン前半の疲れが取れ切れず結果的にけいれんなどを起こして徐々に力を発揮できなくなってしまったと考えられます。

 バッティングを続けることが怪我にどう影響するかは、損傷の程度によりますが全く因果関係がないとは言い切れません。例えば右投げ右打ちであれば、左肘よりはよく使う右肘に負担がかかりやすいということなどもわかっています。大谷選手は右投げ左打ちなので、右打ちの選手よりは負担は少ない。通常、それほど打撃による怪我への影響は大きくない。ただ、手術直後や手術からの復帰過程では注意しながらになる。現状、痛くないなら、打つことは可能でしょう。打つ時にも痛みが出るようなら、かなり危険だ」

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レッズとのダブルヘッダー第2試合後、会見するエンゼルスのペリー・ミナシアンGM ©時事通信

 そうなれば、打者・大谷も諦めざるをえないだろう。

 大谷は現地時間25日に行われたメッツ戦でも「2番DH」でフル出場、先発の千賀滉大とメジャー初対決を果たし、第2打席で2塁打を放つなど活躍。エンゼルスのミナシアンGMはこの日のメッツ戦前に取材対応し「彼(大谷)は今日、プレーする。彼のエージェントとも話し合って彼が我々にプレーできないと言うまでは(させる)。今年は彼にとって特別な年だ。チームにとって、彼が必要なので打線に入ってうれしい」と説明。今後も、大谷の希望を最大限に尊重する考えを示した。

980億とも予測された契約金への影響は…

 大谷は今オフにはFA(フリーエージェント)を控えていた。最有力の移籍先としてドジャースやメッツの名前が取りざたされ、契約の総額は7億ドル(約980億円)にまで達するのではないかとの予測が出たほどだったが、今回の怪我でトーンダウンは否めないだろう。

モレノオーナーと大谷 ©時事通信

 前出のスポーツ紙記者が解説する。

「契約金に関してはほぼ確実に下がるとの話が濃厚です。移籍か残留かをめぐってエンゼルスがどれだけ契約金を用意できるかがこれまでも争点となっていましたが、このタイミングで怪我となると当面は残留する可能性も出てきた。

 選択肢として考えられるのはエンゼルスとオプトアウトの権利(選手自ら契約を途中で見直したり、破棄してFAになることができる権利)付きの契約を今オフに結び直すことです。この形の契約であれば肘の状態が万全になった後で大谷が途中で別の球団に移籍することも可能ですし、球団側としても契約破棄となればそれ以降の年俸は払う義務はありませんから双方にメリットがある」 

 今年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での活躍に始まり、メジャーリーグでも中5日という間隔で投げ続け二刀流を貫いてきた大谷翔平。アメリカでは「ユニコーン」とも呼ばれる天才がいま岐路に立たされている。