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目の当たりにした阪神との差…それでも、新井貴浩監督から学んだ大切なこと

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/09/21
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新井監督のように「信じる」こと、じつはこれがいちばん難しいと思う

 ではここで考えてみたい。たとえば、ファンとして1年間、私たちはつねに前向きでいられただろうか? 自分が思ったような采配じゃなかったり、想像していた選手起用じゃなかったり、大事なところで打てなかったり、抑えるべきところで抑えられなかったり。そこで新井監督と同じように笑顔を見せたり手を叩いたりして選手を労えただろうか? おそらく違うと思う。事実、試合中のSNSでは様々な局面で新井監督や選手を誹謗するコメントが山のように出てくる。すぐに「新井は辞めろ」とか「だから勝てないんだよ」とか「なんでコイツに投げさせるんだ」など。それどころか、皆さんも目にしているように、ここには書けないような酷い言葉も日々、出てくる。

 正直、人間は文句を言っている方が楽なのだ。感情に任せて怒っている方が楽なのだ。だからカープが失点したり逆転されたり負けたりするとSNSは荒れるのだ(これは全球団に言えることでもあるが)。逆に、新井監督のように「信じる」こと、じつはこれがいちばん難しいと思う。全試合、前向き。思いどおりにいかなくても怒らない。それどころか笑顔を見せる。その一方で、私たちファン。自ら選んだチームなのに、自分で好きになったチームなのに、新井監督のように「信じ続けること」ができていただろうか? 信じること、前向きでいることより、文句を言ったり怒ったりしていることの方が多かったのではないだろうか?

 もちろん、それもファンの一面。みんながそうだと言うつもりもない。ただ今年のカープ、新井監督の姿勢、選手に浸透した「一戦一戦」というひたむきな気持ち。そういうものを見て、私は随分と反省した。野次るのは簡単。文句を言うのも簡単。でも、ベンチにいる監督は違う。チームを信じている。逆転タイムリーやホームランが出ると、選手以上に顔を真っ赤にして大騒ぎ。誰よりも飛び跳ねる。時には興奮しすぎて我を失っている新井監督のユニフォームを藤井彰人ヘッドが引っ張って「落ち着け!」と言ってるような場面だってある。そんなシーンを、今シーズン、私たちはどれだけ見てきただろう。その姿を見て何度「またベンチに熱狂的カープファンが紛れ込んでる」などと微笑ましく思っただろう。あんなに無邪気で可愛げのある監督は、なかなかいないと思う。新井監督は私たちファンと同じ「カープファン」だからこそ、あれだけの喜び方になるのだ。そして選手を本気で信じているからこそ、怒らずに励まし、背中を押して送り出すのだ。

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 ちなみにこれは余談だが、カープが初めてCSに進出した2013年。甲子園での試合で、ファーストが本職だったエルドレッドがレフトに入った。迎えた2回、1アウト1塁。誰もが「抜けた」と思ったレフトへの大きなあたりをダイビングキャッチ、そのままフェンスに激突するも素早く返球し1塁ランナーが戻れず併殺が成立。CSファイナルステージ進出を呼び寄せたこのビッグプレーはカープファンの中でもいまなお語り継がれている名シーンなのだが、なにを隠そう、その時のバッターは当時現役だった藤井ヘッド。場所は甲子園。かくいう新井監督も阪神の一員だった。今回の話とはまったく関係ない話だが、これからCSに向かうカープ、阪神との宿命のようなものを感じたので、最後に書かせていただきました。

 さあ皆さん。ベイスターズが迫り、選手の離脱もあり、苦しい戦いが続いていますが、もうひと踏ん張り。引き続き一戦一戦、チームを「信じて」応援し、王者阪神に挑む舞台に再び立とうではありませんか!

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