結果として「阪神は強かった」。そう言わざるを得ないペナントレースとなった。優勝を目指して一戦一戦、懸命に戦ってきたが、結局は届かず。虎の背中どころか、尻尾すら掴めなかった。いや、最後はもう尻尾も見えなくなったと言ってもいい。そして現在、カープは地元広島でのCS開催を目標に切り替えて戦っている。ある意味では「次のステージ」に移行したわけだが、ここで、阪神との攻防を改めて振り返ってみたい。

新井監督は未熟だったのか?

 個人的にまず思い出すのは、7月27日、そして7月28日からの阪神との3連戦だ。まず7月27日のヤクルト戦。勢いに乗りまくっていたカープは怒涛の10連勝を飾り、4月17日以来の単独首位に。3連覇を達成した2018年以来となる7月首位、貯金は今季最多の「14」。最大で9ゲームあった阪神とのゲーム差を一気にまくり、ついに「優勝」の二文字を実現させる場所に立った。

 迎えた翌日、7月28日。首位に立ったカープが猛虎を引き離す最大のチャンス。自分の中では完全に「天王山」で、もうここしかないとすら思った。しかしカープは初戦を落として連勝もストップ。翌29日の試合は引き分け。30日は負け。終わってみれば2敗1分け、阪神に1勝すらできず、あっさりと首位の座を「返還」してしまったのだ。

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 しかし。この時はまだ諦めていなかった。8月に入っても優勝を信じて、いやカープを信じてファンは応援した。そして「最後のチャンス」とも言うべき試合になったのが、今シーズン最後となる9月8日からの阪神との3連戦。ゲーム差は「8」。優勝の現実味は以前よりも薄れつつあったが、ここで一気にゲーム差を縮めればまだ分からない。ということを改めて書いてもファンの皆さんは痛いほどご存知でしょう。カープはここでも勝てず、無念の3連敗。ゲーム差は「11」となり、事実上、優勝に向けたカープのペナントレースは終了。優勝を目指していたカープはここで一旦、燃え尽きてしまった。

 優勝した阪神、いや、岡田監督の野球を見ていて、自分は「カープとの歴然とした差」を感じていた。同じ就任1年目といっても、岡田監督と新井監督では経験値があまりにも違う。その経験値、したたかな戦略、野球観。監督の若返りが進む中、あえて岡田さんを二度目の監督にした阪神は、まさに「熟練」を最大の武器に頂点を極めたのである。

新井貴浩監督 ©時事通信社

 ということは、新井監督は未熟だったのか? たしかに阪神の前で力尽きて違いを見せつけられたが、今年のカープは弱かったのか? たとえ結果がそうであっても、私はそう思いたくない。開幕から優勝の二文字を目指し、勝っても負けても、順位が上がっても下がっても、つねに新井監督は選手を労い、選手を讃え、責めることをせず、インタビューでは「明日も頑張ります」。あるいは「一戦一戦」という言葉を口にしていた。シーズンが進むにつれて、選手たちの口からも同じような言葉が出るようになった。現状に浮かれず、落ち込まず、まずは次の試合。明日。まさにその「目の前の戦いに懸命に挑む」という精神は今シーズンのカープを象徴するものだと思う。