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「我慢」が必要なくなったとき、ドラゴンズは強くなる

 今年のドラゴンズは、現役ドラフトやトレードで移籍した選手が活躍した。このことについて聞くと「この前さ、焼肉を食べていたら、偶然同じ店に細川(成也)、宇佐見(真吾)、涌井(秀章)の3人が来たんだよ」と驚きのエピソードを明かしてくれた。

「最初に店に入ってきたのが宇佐見。ドラゴンズに来たばっかりだったから知らなくて。その後が細川。なんか見たことあるなぁ、と思った。3番目に入ってきたのが涌井。涌井が気付いて、走って挨拶に来た。2人も慌てて立ち上がって、『今、実は“外様会”を3人でやってるんです』って。3人とも酒も飲まずに、すごく食べる。茶碗じゃなくて、ご飯のお釜ごとおかわりしていた」

 想像すると凄い光景である。お釜で米をおかわりする“外様会”3人と、それを見守る森繁和さん。「すぐにチャンスを活かしたあいつらは大したもんだ」と森さんは言う。

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「細川は他に打つ人がいない中、結果を出した。宇佐見は木下の怪我もあって、すぐ使ってもらえて結果が出た。木下が戻ったらファーストをやって、バッティングを活かすことができた。他球団に行った人も頑張っているから、日本の野球界もどんどんこういうことをやっていかなきゃいけない。トレードが活発になっているのはいいことなんだ」

「ドラゴンズが今後また優勝を目指すためにはどうすればいいですか?」と私が聞くと、森さんはこの日一番困った顔をしていた。

「こればっかりは『待ってて、我慢して』って言っても『何年我慢してると思ってるんだ』ってみんな言うのよ。2011年が最後でしょ? もう今は2023年。干支が一回りしている」

 森さんはまず「我慢という体勢から抜け出すこと」が大事だと言う。今は期待して我慢しながら使っている選手が、1年間フルで活躍できる体力や実力をつけることが大事であり、チームやファンもその間はどんな状況であっても応援する我慢が必要なのだと。

 気にしなければいけないのは今季の成績ではない。成績に関わらず、今出ている選手たちが来季も頑張ることが必要だと森さんは言う。

「出ているけど負けてるとか、そんなことは気にしなくていい。投手は特に勝敗なんて展開次第で全く逆だった可能性もある。あとは若手の頑張りの上積み、外国人の活躍が優勝に向けては不可欠」

 優勝というのは、そう簡単なことではない。しかし、我慢しなくても、若手、中堅、ベテランが期待通りの力を出せるようになった時、今のメンバーでも十分に優勝できると森さんは力強く話してくれた。

森繁和さんと筆者 ©舘谷春香

 最後に「辛い時も応援を続けるドラゴンズファンに何か一言いただけますか?」と言うと、森さんは「辛いよねえ」と優しく笑った。

「でもね、声は届いている。俺の時も弱かったけど、一生懸命応援してくれていたのは分かっていたから。今年は特に声出し応援が全面的にできるようになった。今はそれで発散してもらって、とにかく楽しんでもらって。でもこのままのチーム状態が続いたらファンが離れてしまうというのも分かっている。だからチームはもう一度またキャンプからやり直して、もう一度みんなで頑張りましょうよ、って。ドラゴンズの外野で応援してくれている人たちっていうのは、12球団どこにも負けない熱さがある。それはみんな分かっていて、ちゃんと届いているんだよ」

 今シーズン、どんな試合でもドラゴンズファンの声援はすごかったと私も思う。なかなか勝てない苦しい試合もあったが、その分、勝った時の喜びも大きかった。

 来年は、再び優勝を目指す強いドラゴンズが見たい。そのために今はたっぷり我慢しよう。私たちが我慢しなくなった時、この低迷期を支えたドラゴンズファンの皆さんと共に優勝の喜びを分かち合いたい。

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