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 法廷が息を飲んだのは、実際の音声も再生された昨年1月16日の犯行場面だ。夜9時過ぎ、歩夢くんから「おやすみなさい」の挨拶がなかったことに石井が激怒。石井と丹羽の叱責が始まる。

あらかじめ危険が伴うことを想定し、ヘッドギアを被せていた

「お母さん、相撲の時間かな」

 起点は常に石井だった。石井の「ハイ、ヨイショ」の掛け声の後、知香が歩夢くんの足を掛けて投げ倒す。畳の上に「バン!」と小さな身体が叩きつけられる音。倒されても丹羽から強制的に起こされる歩夢くんが、泣いて咳き込む。

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「ほらほら始まった。そういうこと。舐めてるだけ」

 石井が追い詰めると、知香のカウントダウンが始まる。

「3」
歩夢くんが泣き苦しむ声。
「2」
泣いている歩夢くんの言葉は判別ができない。
「1」

「はい、痛くやった方がいいんじゃない?」
 ドン!と床に叩きつけられる音。

「頭だけは気をつけて」

 この夜、歩夢くんには丹羽がラグビーで使っていたヘッドキャップが被せられていた。危険が伴う体罰であることは、あらかじめ想定されていたのだ。だが、丹羽と石井は「麻原彰晃みたい」と言って笑っていたという。

丹羽洋樹被告

挨拶をしても終わらない暴行

 再び「3、2、1」のカウントダウン。

「どうするんですか?」

「おやすみなさい、あおちゃん(※石井の通称)、洋樹くん」
 
 歩夢くんが泣きながら声を絞り出しても、暴行は終わらない。

「ぶっ飛ばすよ」

「知香、確信犯だよ。お相撲したらいい」

「なに急に話してるの」

「知香、ファイト!」

 石井と丹羽の声は、どこか楽し気ですらある。無情なカウントダウンと歩夢くんが叩きつけられる音、苦しそうな泣き声。陰湿な詰問と虐待は、その後もしばらく続いた。そして、歩夢くんが命を落としたのはその2日後、2022年1月18日のことだった。