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2012年以前の反日活動と今回の“違い”

 中国の反日活動は今回が初めてではなく、11年ぶり数回目となるわけで、筆者は最初「またか」と見ていたのですが、11年前とは前提が変わっていることに気づきました。それがひいては、今回の反日活動の特徴に繋がっていると感じています。

処理水放出を論じる上海の新聞「新民晩報」

 まずこの11年で中国が強くなった。ご存知の通り経済力が上がり、それだけでなく日本でも中国製品の存在感が高まってきました。この11年で中国人観光客の爆買いがあり、中国製のスマートフォンやゲームが世界で台頭。さらに、中国のITやチャイナコスメなど、様々なジャンルで中国を過剰に褒める「中国スゴイブーム」が起こり、それをインフルエンサーが宣伝し、日本の若者が中国に惹かれたわけです。

 中国製スマホのシャオミ、ファーウェイ、OPPOなどは世界的に有名で、日本でもよく売れています。反中感情の強いインドでも中国製スマホは売れていて、使われています。コスパは良いし性能は悪くないし撮影クオリティも高い。

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 対して、2012年以前の反日デモではスマートフォンが普及していなかったので、中国人が日本のデジカメや業務用ビデオカメラで日本製品不買を訴えるデモを撮影していました。反日なのに日本製品を使うことは、当時ずいぶん話題になったもので、デモをしていた人は矛盾と屈辱を感じていたでしょう。

 スマホだけではありません。11年前と比べてEVも普及したため、それまで人気だった日本のガソリン車は投資価値がないと判断され、中国で売れなくなっています。中国では、家電も自国のメーカーが席巻。ハイテク産業や車だけでなく、これまで安全でないと思われていた食品分野でさえも、「HEYTEA」などのティードリンクをはじめ、多くの“中国ブランド”が売れるようになりました。

 中国では、自国の伝統的な文化と現代のトレンドを融合させる「国潮(グオチャオ)」と呼ばれるブームが起きて、ベンチャー企業が資金を調達しては奇抜なデザインの商品を次々と出すようになり、中国製や中国ブランドが特に若い世代から信頼されるようになりました。「国潮」という大きなブームの中、様々なジャンルで中国的なモノが次々と登場し、流行して、あっという間に廃れていったのです。

 今回の反日電凸を行う若い世代は、自国のトレンドの流行り廃りを経て「他人とは違う自分でありたい」とオリジナル志向を示すようになった、と様々な調査結果で言われています。

自国に自信を持った中国の若者が、今回の反日活動の主役だ

「スマホはアヘン」と注意喚起が出るほどネット漬けの中国人

 しかし、中国人にとって日本は無視できる存在になったかというと、そうではありません。日本への旅行は身近になり、爆買いをするだけでなく、生の日本を感じるために来日する人が増えたのはご存知の通り。この10年で、日本のグルメドラマ「深夜食堂」や「孤独のグルメ」の中国版が製作されて人気を得たり、中国の大手ゲームメーカー・ネットイースが開発した、日本の平安時代を舞台にしたゲーム「陰陽師」も大ヒットして若者に支持されました。日本の様々なアニメが中国の小中高生のハートを掴んで、日本語も身近になりました。