「ガチ中華」の逆版ともいえるリアル日本料理志向も進み、焼き鳥と日本酒のバーが中国で人気になっています。
さらには日本料理や日本旅行ブームに乗っかって、日本のネオン街をそのまま中国国内につくり、ニセ江ノ電車両やニセ和歌山電鐵車両が置かれ、「映えスポット」として中国の若い世代に注目されています。日本らしいものに多くの若い世代が関心を持つようになったわけです。
そうした中国のブームを下支えしたのが、爆発的に普及したスマートフォンと、動画系を含むSNSです。中国のネットユーザーは、2012年末で5億6400万人だったのが、2022年末には10億6700万人まで増えました。しかも情報取得方法がパソコンからスマホに変わったことで、ユーザーは四六時中ネットの情報を見るようになり、「スマホはアヘンだ」と注意喚起が出たほどなのです。
昔に比べて圧倒的に情報が多くなり、バスや列車内も含めてテレビなどの公式情報を見るのではなく、スマホを使ってSNSで情報を得て、それを発信するようになりました。その代わりに、習近平体制下でさらにSNSの規制が強化され、前向きな中国情報ばかりが配信されるようになりました。
今回の福島第一原発のALPS処理水海洋放出の件でも、日本やIAEA(国際原子力機関)の情報や、ガイガーカウンター(放射線量計測器)を買って調べたら中国国内のほうが放射線量が高かった、といった情報をSNSに投稿したら、爆速で消されるように。中国で無数に雇われているネット検閲員は、近年にないブラック労働を強いられて、さぞかし大変ではないだろうかと推察します。
一過性のブームだという指摘も…それでも日本叩きがなくならない理由
日本料理店の店長から無職、インフルエンサー、“電話ガチャ切り”の名もなき若者まで、今回の反日活動は、勢いのある中国を見て育ち、なおかつスマホと動画に強い若者が参加しています。しかし、「国潮」ブームの瞬間的な盛り上がりを踏まえると、今回も一過性のブームだと思います。バズりを狙い、新しいストレス解消を求める若者が湧いて出てきて、新たな嫌がらせで集中的に盛り上がって引いていく動きは、今後もあるかと思います。しかも「他人と違う感じがいい」という若者の風潮から、予想だにしない嫌がらせの手法が生まれるかもしれません。
迷惑電話をはじめとする今回のアクションを起こした20代は、まだ結婚や子育てをしておらず、養育費やローンを抱えていません。それより上の世代のアクションがほとんどないあたり、若気の至りでやっているように思えてなりません。中国でも20代は夢見る世代で、30代以上になると落ち着くものです。活動に加わった若者も30代や40代になれば、今回のような行動は取らなくなるでしょう。
しかし、結局また下の世代が憤って行動を起こしてしまうわけで、今後も反日活動は何年かに1回発生するのではないかと思います。日本車や日本施設の破壊、日本への電凸は、これまで政府がぴしゃりと禁止すれば最終的に鎮まったので、今回も早く日本への嫌がらせを禁止してほしいものです。ただ、9月3日の「抗日戦争勝利記念日」や、9月18日の「柳条湖事件式典」、9月23日から杭州ではじまるアジア競技大会もあるので、まだまだ反日活動は続きそうです。