全てを隠蔽して逃げ切ろうとする石井は、自首が頭を過っていた丹羽も、言葉巧みに丸め込んだ。会話の一部は、丹羽のスマホのボイスメモに残されており、法廷でも再生された。日付は、歩夢くんの死から9日が経過した2022年1月27日。以下はその概要だ。
「身から出たサビだし」
石井「(事件のことは)もうしょうがないから今後に生かせって言ってるの。自分の力の強さを分かった方がいいよ、マジで。知香と分散しなかったら無期懲役だよ」
丹羽「しょうがないよね。俺が悪い。自分で招いたことだし」
石井「知香がまっくろくろすけだから、『俺』だけが悪いんじゃないのは立証されるし、私もそう言うし、別れても嫌いになってもあんたを悪く言わないから。知香なんてもっと疲れてるよ。我が子を殺されたってことだから」
丹羽「いいよもう、めんどくせえ」
石井「めんどくさくないよ」
丹羽「もういい、出頭する」
石井「出頭してもいいけど、あんたが想像するようなことがいっぱい待ってるから」
丹羽「別にいい。淡々と答えるし」
石井「分かってないじゃん」
丹羽「分からなくてもいいよ。もう疲れた、考えるのは」
石井「身から出たサビだし、どうにかしなきゃ。洋樹が強く投げ飛ばしましたって、知香は言うかもしれないよ。でもその時、私は、違います、知香が何十回もやった、洋樹のせいじゃないって言うよ。塀の中の1年と日常の1年は全然違うからね。刑期10年と5年でも全然違う。(歩夢くんは)死んじゃったんだな、と、私と知香は胸に刻んだ。母親が埋めてるんだよ」
結局、丹羽は自首しなかった
結局、丹羽が自首することはなく、3人は歩夢くんを床下に埋めた本庄の家で生活を続けた。知香は歩夢くんの死後、保育園の退園手続きで「大阪の実家で元気にしている」と説明。だが、安否が確認できなかったことから、3月2日、本庄市が警察に連絡し、3人は同5日に逮捕される。最初に完落ちしたのは、母の知香だった。
8月30日、丹羽の被告人質問では、こんな発言があった。
「こうやって皆さんの前で、私や知香さんの真実の言葉を話すことができて、(歩夢くんが)浮かばれるかなとは思っています」
法廷でどう取り繕おうとも、歩夢くんが、激痛と絶望の中で息絶えていった現実は変わらない。