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 これは日本の国民性や教育とも関係している。サッカーやバスケなどで海外の指導者が数多く日本にやってきているが、彼らの多くは、日本人の「自分で考えて、動く能力」に物足りなさを感じているという。その一方で、監督の求める仕事をこなす「遂行力」については、高く評価している。自由に判断するよりも、明確な役割をこなすほうが日本人の気質にあっているということだろう。

監督が高く評価した「求める仕事をこなす遂行力」

 東京五輪でホーバスHCが指揮した女子の代表が銀メダルをとったことは先に記したが、そのときのキャプテン高田真希は、その要因についてこう話していた。

「ホーバスHCが、各選手としっかりコミュニケーションを取って、『君にはこういうことを求めている』と役割を明確にしてくれたのが大きかったです。何を求められているのかが明確になっていたので、良いプレーができた。それがメダルにつながったと思います」

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 そんな指揮官のチーム作りは男子のチームでも変わらない。彼はバスケの総合力が高い選手ではなく、一芸に秀でた選手たちを集めてチームを作った。

 その象徴が、Bリーグのオールスターと日本代表の関係だ。以前は、オールスターに選ばれるようなスター選手が日本代表に入ることが多かった。

 だが、今は違う。

 現在の代表チームにはBリーグでプレーする選手が9人いるのだが、そのうちで今年1月のオールスターに選出された選手はわずか3人、33%に過ぎない。それ以外の選手たちは、オールスターに選ばれるような総合力があるわけではないが、世界と対峙するときに武器になるような特長を持った選手たちだった。

 守備の能力が高い選手、リバウンドを取るのが上手い選手、海外の選手に対してもひるまずに身体ごとぶつかっていける選手……。一芸に秀でた選手たちそれぞれにホーバスHCが特定の役割を与え、それを持ち寄って構成されたのが現在の日本代表なのだ。

 こうした3つの柱があり、日本は飛躍的な成長を遂げたのだ。

 そして、何より大事なのは、そうした特徴が「日本の武器になる」とホーバスHCが選手に信じさせたことにある。最後にキャプテンの富樫勇樹のこんな証言を紹介しよう。

「トムさんはチームを鼓舞するためにいつも強気な発言してくれます。トムさんが心からそう思って発言してくれていることが選手にしっかり伝わっているんです」
 

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