ターゲットを決めた「合図」
するとジャニーさんがこちらに近付いてきて、僕の肩をマッサージしながら、こう言った。
「ユーたち早く寝なよ。カウアン、早く寝なよ」
外国人的な名前は覚えやすいのか、ジャニーズJr.になってまだ1カ月くらいしか経っていなかったのに、「カウアン」という名前はすでに覚えられていた。
思えばそれが、ターゲットを決めたという合図だったんだろう。
ほかのジュニアもそれで「今日はカウアンか」と気づいたと思う。
その日はジャニーさんの部屋から近い部屋で寝ることになった。ジャニーさんから「寝なよ」と言われたときは、ジャニーさんの寝室か近くの部屋に寝ないと、翌日すごく機嫌が悪くなると聞いたからだ。部屋にはベッドが3つもあって、ほかのジュニアもそこに寝ていた。
深夜に感じた、ジャニー氏の気配
ジャニーさんは深夜に目を覚ますと、家の中を歩き回る。カーテンを閉めたり、つけっぱなしになっている電気やテレビを消したり、ジュニアに布団をかけたり。ジュニアが遅くまで騒いでいないか、見回りをするのだ。その音がすると、「ああ、片付けが始まったなぁ」とわかる。同時にそれは、ジャニーさんが部屋に入ってくるまでの長い長い待ち時間でもあった。
サッサッサッサッ。サッサッサッサッ。
皆がすっかり寝静まった頃だ。廊下にスリッパの足音が響く。ジャニーさんは家でスリッパを履いているので、誰が歩いているのかがわかる。その足音が、僕の寝ている部屋の前で止まる。
まさか、今日?
寝付けずにまだ起きていた僕はそう思った。胸が張り裂けそうなぐらい心拍数が上がっていくのがわかる。間もなくドアが開き、廊下の光が部屋の中に入り込んでくる。ジャニーさんは見回りでカーテンを閉める際に、僕らがどこに寝ているのかを見分けていたのだと思う。薄明かりの中で、まっすぐに僕の寝ているところへと歩いてきた。スリッパの音が止まる。
下の方からベッドに入ってきて、布団を引きはがされた。そして僕の腰のあたりでジャニーさんが横になった。着ている浴衣の下半身をすぐにはだけさせられる。しわの多い手が直接身体に触れ、足のマッサージが始まった。
うわ、マジだ。
これ、ヤバくね!?
でも、もしかしたらマッサージだけで終わるかもしれない……。
そんな淡い期待はすぐに打ち砕かれた。