故・ジャニー喜多川氏による性加害を実名・顔出しで告発したカウアン・オカモト氏。その勇気ある行動は、日本社会の巨大な「山」を動かした。ここでは、オカモト氏の著書『ユー。ジャニーズの性加害を告発して』(文藝春秋)を一部抜粋して紹介する。
2023年4月、日本外国特派員協会で記者会見を開いたオカモト氏。実はその前にジャニーズ事務所の現社長・藤島ジュリー氏サイドから連絡があり、対面で話し合っていた。そのとき、ジュリー氏が語ったことは――。(全2回の2回目/最初から読む)
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まだ話し足りないような気もしたし、がっつり話し切れたという思いもあった。
ひとつ言えるのは、すごく自由な場だった、ということだ。
会見に来てくれた多くの記者たちは「どんな爆弾が落とされるんだろう」と思いながら聞いていただろうし、僕の口から何が発せられるのか、想像できなかったのではないだろうか。
確かに、会見には、誰かを糾弾するためだったり、誰かが弁明をするためだったり、「これを聞くのが目的だ」というものもあると思う。でも今回の会見はちょっと違った。ゴールがない中、みんなで素の状態で作り上げた会見、という感じがした。
世界中のメディアが報道
終わって控室に戻ると、何人かの記者さんと挨拶を交わし、取材の約束をした。事前にDMで連絡を取り合っていた人たちだ。控室の外にも何人か待ってくれている記者さんがいて、名刺をもらって、その後、取材を受けた人もいる。
FCCJが入っているビルの外に出た瞬間、テレビのディレクターに直撃取材もされた。ちょっと驚いたけれど、真剣に話をさせてもらった。サングラスをかけたままだったが。
〈元ジャニーズ「性的被害受けた」 カウアン・オカモトさんが会見〉
会見中、すでに会見のことがニュースになっていた。最初に報じたのは共同通信だった。正直言うと共同通信がどんなメディアなのか知らなかったけれど、全国各地の契約を結んでいる新聞社に記事を配信している会社で、そのおかげで日本全国のメディアが会見の記事をネットで次々に出していった。
翌日の朝刊では朝日新聞、読売新聞、毎日新聞など大手紙もこぞって報じていた。NHKも翌日の夕方のニュースで会見の内容を伝えていた。
朝日新聞は4月15日の朝刊の社説で〈ジャニーズ「性被害」検証が必要だ〉と書いていた。NHKと朝日新聞からは、その後、個別の取材も受けた。