人類学者ヘレン・フィッシャー氏は、人間の男女の「愛の揺らぎ」についての研究に取り組み、「恋愛感情は3年で冷めやすい」という結果を導き出した。その研究結果は書籍やバラエティ番組で数多く取り上げられ、いまや「恋愛3年説」は広く知られている考え方になっている。

「恋愛感情は3年で冷めやすい」。それでは、良好な関係が長続きしている夫婦・カップルはいったいどのように関係性を構築しているのか。トレンド評論家の牛窪恵氏による『恋愛結婚の終焉』(光文社新書)の一部を抜粋して紹介する。

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続くカップルはなにが違うのか

 男女が出会って恋に落ちると、恋愛の第1ステージでは、ドーパミンやPEAが脳内に放出され、胸がドキドキしたり、相手のことしか考えられなかったりと、周りが見えにくくなる。そして、おもに動物的本能から「快感」をおぼえ、やみつきになる。

 それなのに、男女ともに、半年から3年ほどで恋愛気分を忘れ、一部は別の異性に目移りし始めます。ドーパミンにはブレーキホルモンが働きやすいうえ、PEAの放出期間は長くて4年程度だからです。さらに男性は、テストステロンが3割も減少し、少しの間、「父親になる準備」を始める。男らしさは失われ、コロンと丸みを帯びた体格になり、セクシーさは影を潜めてしまいます。

 こうなると、「恋人の魅力が薄れた」と感じる女性もいるでしょう。女性のほうも、胸がキュンとなるような恋愛気分は、往々にして長くは続かないのですから。

 そんななか、男性が別の女性に目移りし、再び繁殖の準備を始めたと分かれば、ますます「なぜこんな人と付き合っていたのか」とバカらしくなるのも当然です。

 では、恋に落ちてから4年後に、すべてのカップルは別れるのでしょうか。

 もちろん、そんなはずはありません。また、すべての男女が「愛がすっかり冷めたのに、子どもや社会的信頼などのため『やむを得ず』夫婦(カップル)で居続けている」のかといえば、そうでもなさそうです(少なくとも、私は違います、いまのところは)。

 そうだとすれば、彼らを繋ぎとめている感情とは、一体どんなものなのでしょう。