セックスレスの弊害
そうだとすれば、恋愛の第1ステージから第2ステージへと移行する「橋渡し」の過程では、スキンシップとしての性行為が、一定の働きを担うとも考えられます。
ただ近年、日本では婚姻カップルの約半数が「セックスレス」、すなわち、病気など特別な事情なく、性交やセクシュアル・コンタクトが1か月以上ない状態です(図表3)(’04~’16年 日本家族計画協会「男女の生活と意識に関する調査」ほか)。また、世界41か国のセックス頻度を調べた直近の調査(少し古いですが)によれば、日本のカップルのセックス頻度は平均45回/年と、世界平均(103回/年)の半数以下で、41か国中最低レベルでした(Global Sex Survey Results, Durex. 2005)。
既述の通り、日本では結婚して4年目まで(5年未満)の離婚が、離婚カップル全体の3割以上にのぼります。ましてや恋愛(交際)のスタートから4年目までの別れとなれば、その数倍に達するでしょう。
そう、「恋愛3年説」の通り、恋愛第1ステージから第2ステージへの移行は、(とくにスキンシップが少ない日本において)おそらく容易ではないのです。
「恋愛」から「信頼(愛着)」のステージへ
また、ここまで見てきた通り、私たちが「恋愛」と聞いて真っ先にイメージするような第1ステージの恋愛、すなわち胸がドキドキ苦しくなるような、快感系の情動や動物的欲求は、第2ステージの信頼(愛着)系の感情とは、まったく異なるものです。
フィッシャー氏の先の提言に基づけば、ヒトにおいて交配と生殖から進化した恋愛系のシステムは3つ、すなわち (1)性欲、(2)恋愛、(3)愛着です。性欲((1))は、空腹のときのようなちょっとした「苛立ち」に近く、また恋愛((2))は、気分の高揚や、対象者に初期に感じる「執着」に似た感情だといいます。
では(3)の愛着はといえば、「長年のパートナーに対して感じる、落ち着きや安心感」とのこと。今日、私たちが結婚生活に求めるのは、まさにこの愛着ではないでしょうか。
もし私が生まれ変われるなら、「一生、恋愛に生きる」と決めて、情熱的で胸ときめく恋愛を追い続けるのも素敵だなと思うこともあります。ですが、結婚は生活です。苛立ちに近い性的衝動や、執着に近い恋愛感情が中心では疲れるばかりで、とても落ち着いて子育てできる状況にはなれないでしょう。
これらを総合しても、やはり恋愛と結婚を結びつけて考えようとするのは、相当無理があると思えませんか?
実は、私たちヒトの進化過程を見ても、「結婚(一夫一婦)」という配偶システムが誕生した背景には、「恋愛」より「信頼(愛着)」に近い感情があったようなのです。