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 普通の踏切にすればいいじゃないか、音が鳴るとうるさいから遮断機が下りるだけでもいい、人感センサーのようなものを使ってみては、などなど、思わぬ提案を受けることもあるという。

「ただ、簡易的なものでいいからと言われても、踏切は保安装置ですので、いざ設置してそれがうまく作動せずに事故が起きたとなったらそれこそ責任が取れません。また、列車の通行時間を表記するというアイデアもありますが、ダイヤが乱れた場合はかえって危険。なので、こういうものでご理解頂いて、多少ご不便をおかけするかもしれませんが、万が一の事故のリスクを減らしたい、とひとつひとつお話にうかがっています」(原さん)

 

「これを設置したら100%安全というわけではありません。ただ…」

 ちなみに、住民の安全に関することだから自治体はみな賛成、ともいかないらしい。そもそも踏切の安全に対する関心には自治体ごとに違いがあるからだ。事故を経験したことのある町は話が早いが、そうでないところもある。その点も含めて、原さんたち安全管理を担当する人たちは4種踏切のある町に足を運んで説明を尽くしている。

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「もちろん、これを設置したら100%安全というわけではありません。通る人が列車に注意してもらうというのは変わらない。ただ、少しでも注意を促すという点では間違いなく意味があるはず。なので、できるだけ早い段階で管内300か所以上ある4種踏切のうち設置可能なすべてに設置していきたい。そして、同じ悩みは全国の鉄道事業者さんが抱えているでしょうから、安全対策のひとつとして参考にして頂けるところが増えるとうれしいな、と思っています」(原さん)

 実際に、山口県の宇部線の4種踏切に設置されている踏切ゲート-Liteを見させてもらった。バーを持ち上げるのにはさほど力は要らず、すぐにバーが下りてくるわけではないからゆっくり歩いてもバーが頭にぶつかることもない。踏切内から出るときは、身体でそのままバーを押すだけだ。通行のじゃまになるというほどのものではない。

 

「ここは踏切ですよ!」

 ただ、忘れてはいけないのは列車が来るか来ないかの安全確認は通行する人が自分でしなければならない、ということ。せっかく踏切ゲートが設置されて、「ここは踏切ですよ!」とアピールしてくれるのだから、それだけは怠ってはいけないだろう。ふだん、フルスペックの1種踏切しか通っていないと、何もない4種踏切を通るときにはちょっとした恐怖感を覚える。しかし、これが毎日の日常となると、恐怖感も薄れてしまうのだろう。

 少しでも安全性を高めるためにあの手この手を繰り出す鉄道会社。それに対し、そこを通る人たちもまた、安全に対して少しでも意識を向ける必要もありそうだ。

写真=鼠入昌史