日本には、3万以上の踏切があるそうだ。都心で暮らしている分には踏切に遭遇することは少なくなっているが、それでも少し郊外に出れば確かにあちこちに踏切はある。

 踏切というのはなかなかやっかいなもので、クルマを運転する人にとっては一時停車が求められてうっとうしいし、開かずの踏切ともなれば大渋滞の原因にもなる。緊急車両の通行に支障するという問題もあるだろう。クルマなどが踏切内に立ち往生してしまい、列車と衝突するという痛ましい事故もたびたび起きている。

 だから、立体交差事業などによって鉄道会社も自治体も踏切の廃止に躍起になって取り組んでいる。原則として新しく踏切を設置することができないことになっているくらい、踏切はやっかいなものなのだ。

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 もちろん、郊外私鉄の小駅の脇にある、商店街を横切るような小さな踏切が町の雰囲気を高めてくれるというプラスの役割もあろう。ドラマや映画では、踏切を間に挟んで男女が向かい合って……などというシーンもよく見かける。真夜中に望遠鏡を担いでいく目印にもなる。とはいえ、全体としては踏切はあまり好かれているものではない。

 

“嫌われ者”の踏切の中でも、特に「やっかいなもの」が…

 そんな中でも特にやっかいなのは、遮断機がなく警報音もならない、第4種踏切道である。

 ふだん、都心で暮らしている人が見かける踏切は、電車が近づくとカンカンと警報機がなり、赤い照明が点滅し、黄色と黒の遮断機が降りてくるというものだ。

 これはいわばフルスペック踏切。第1種踏切道といい、全国の踏切の9割ほどを占める。警報音で電車の接近を教えてくれるし、遮断機で道が塞がれているのにムリに通ろうとする人はあまりいない。だから、安全性の高い踏切、というわけだ。

 ところが、ローカル線ではそうしたフルスペック踏切ばかりではなくなる。警報機はあるものの遮断機を持たない第3種踏切道やどちらも持たなくて「ふみきりちゅうい」などという標識があるだけの第4種踏切道が、いたるところに残っている。とうぜんフルスペックの踏切と比べて事故リスクは高く、事故発生頻度は第1種踏切道の約2倍だとか。これが本当に、鉄道会社の頭を悩ませている。