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あれ、自分で開けられてしまうなら、もはや列車が通るかどうかは関係ないのでは…?

 ただ、ここで気になるのは、列車が通るかどうかとは関係ないという点だ。ならば、いままでのようにゲートがあってもなくても、そのまま列車の通過を確認せずに通ってしまったら、事故は防げないのでは……。

「もちろんそうなのですが、肝心なのはそこに踏切があって列車が通る可能性があるということを認識していただくことです。実際に、宇部線にゲートを設置して現地試験を行ったところ、設置前には4割だった一時停止率が9割にまで上がりました。

 これまでの4種踏切での事故の例を見ても、特に注意しないで確認せずに入ってしまったケースが多い。ですから、いったん踏切の前で立ち止まっていただくだけでも大きな効果があると考えています」(原さん)

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 なるほど、確かに警報機のない踏切では、列車がいつやってくるかわからない。なので、「どうせ大丈夫だろう」という正常性バイアスが働くときほど事故が起こりやすい。

 その点、ゲートを設置して一時停止せざるを得ない状況を作り出せば、少なくとも「あ、踏切か、通っても大丈夫だよね?」くらいの意識は働くだろう。それが、何も考えずに通ってしまって列車にはねられる、という悲劇を防ぐことにつながるのだ。

「そこに踏切がありますよ」と思ってもらうことの意味

 こうした4種踏切は、不特定多数が通るわけではなく、むしろ特定少数の人たちが日常生活の合間に利用しているケースがほとんどだ。そしてこれまで一度も危ない思いをしていないとなると、正常性バイアスが働くのも自然なこと。だからこそ、ゲートを設置して「そこに踏切がありますよ」と認識させることが安全確保の第一歩、なのである。

 

 ならば、どんどん設置していけばいいじゃないか、と思う。JR西日本中国統括本部の管内には、約300か所の4種踏切があるという。ほとんどが列車本数の少ないローカル線だが、中には山陽本線のように貨物列車を含めて多くの列車が走る路線もある。これまで悲惨な事故があった踏切もある。踏切ゲート-Liteは設置も簡単なのだから、すぐにでも。……と思いきや、これもまた簡単な話ではないようだ。

「踏切ゲート-Liteの設置にあたっては、地元自治体はもちろん地域の町内会などにも事前にお話をさせて頂いているんです。その踏切が日常的にどのように利用されているかを確認するとともに、設置にご理解を頂くよう努めています」(原さん)

 安全性を高めるものなのだから、地元の人も諸手を挙げて賛成……とはなかなかいかないのが現実だ。いくら簡易的なものであっても、それまではそのまま歩いて抜けられたところにひとつ“ジャマなもの”が現れるということ。いままでも気をつけていて事故がなかったんだから、そのままでもいいじゃないか、となるわけだ。