1992年にサッカー・Jリーグが発足した当時からの加盟10チームを、「オリジナル10」と呼ぶらしい。別に後から加わったから悪いわけでもないし、オリジナルがこれといって優遇されるわけでもない。ただ、やっぱりちょっと一目置かれるような、そんな位置づけなのだろう。大きくなったベンチャー企業の創業者メンバー、みたいなものか。

 そんなわけで、似たようなものはないかと探してみると、やっぱり鉄道である。鉄道路線の駅は、Jリーグどころではなくあとからあとからどんどん増えてゆく。

 たとえば、天下の東海道新幹線。開業時の駅は12駅だけだった。それが、あとから品川・三島・新富士・掛川・三河安城が加わって、いまは17駅になった。

ADVERTISEMENT

 新大阪からそのまま西に行って山陽新幹線を見ても同様だ。1972年に新大阪~岡山間が開業した時点では新大阪・新神戸・西明石・姫路・相生・岡山の6駅。1975年に博多まで延伸すると、新倉敷・福山・三原・広島・新岩国・徳山・小郡(現在の新山口)・新下関・小倉・博多の10駅が一気に加わった。開業時からの駅というと、これらが山陽新幹線のオリジナル16、ということになる。

 では、山陽新幹線であとから加わった駅はどこなのか。答えはみっつ。1988年に新尾道・東広島が、1999年に厚狭駅が加わった。厚狭駅はもともと山陽本線の駅があったから、新幹線単独の純粋な新駅は新尾道駅と東広島駅のふたつだけだ。オリジナルとは違い、こうした後発の駅はいずれも地元自治体がおカネを出してつくった、いわゆる請願駅である。

 さて、ここで問題なのは、東広島駅である。

山陽新幹線「のぞみ」の“ナゾの通過駅”「東広島」には何がある?

山陽新幹線「のぞみ」の“ナゾの通過駅”「東広島」には何がある?

 新尾道駅のほうは、なんとなく理解できる。尾道と言えば、某三部作や小津映画『東京物語』などでもおなじみのザ・観光地。その玄関口として、新幹線駅を欲するのはとうぜんといえばとうぜんだ。お客にしても、新尾道という駅名から尾道の玄関口だろうと想像できる。

 まあ、実際のところは新尾道駅はほとんど「こだま」しか停まらないし、そもそも尾道の市街地とはだいぶ離れている。福山あたりで「のぞみ」から在来線に乗り換えて尾道駅を目指すほうがよほど便利である。それでも新幹線があるかないかが重要だというのも納得できる。

 ところが、東広島だ。東広島というと、ヨソ者にしてみると「広島の東ってことですよね、どんなところなんでしょう、わかりません」となってしまう。在来線にも似たような名の駅はない。かつて、東広島駅という貨物専用の駅があるにはあったが、いまはなくなってマツダスタジアムに生まれ変わっている。