「ひかり」が朝に3本、昼間には「こだま」が1時間に1本停まる駅「東広島」
それが、1975年に新幹線の線路が通り、それとともに賀茂学園都市開発がスタート。ならば駅もあったほうがいいよね、ということで1984年には新駅設置が決定して1986年に着工、1988年の開業に至った。なお、下三永村は1955年に西条町に合併され、さらに1974年には周辺の町と合併して東広島市が誕生している。
東広島市が開業した1988年はバブル景気のさなかだ。きっと、広島大学の移転とあわせて駅周辺も大開発されるだろうというもくろみがあったに違いない。が、ほどなくバブルは崩壊し、東広島駅南側の開発が本格的にはじまったのは2000年代以降になってからだ。
東広島駅のお客の数も、乗車人員にして長らく1日1000~1100人程度で推移している。新幹線の駅としては、さすがに少なすぎるきらいが否めない。件の通り、大学に通う人たちは主に新幹線ではなく在来線の西条駅経由。駅周辺も少々開発されたくらいで目立った観光地もないとなれば、いたしかたないところだ。
とはいえ、思わぬところで東広島駅が力を発揮したこともある。2018年7月の西日本豪雨で在来の山陽本線が被災してしまったのだ。それで西条駅から広島大学へ、という人たちが難儀することになり、新幹線で代行輸送が行われた。災害の多い昨今、ひとつの町にひとつの交通機関だけでは心許ない。東広島駅が代行輸送で使われたことは、それを証明することになったのである。
ともあれ、普段の東広島駅はホテルが駅前にふたつ聳えるのが目立つくらいの小さな駅だ。駅前の賑やかさでいえば、在来の西条駅が上回る。
停まる列車は「ひかり」が朝に3本ある以外は「こだま」だけで、昼間になると1時間に1本しかやってこない。バスが西条駅まで通じているので、それを使えば西条の酒蔵観光などにも役に立つ。ただそれも本数が少ないし、やっぱり全列車が停まる広島駅を拠点にした方が便利そうだ。
と、最後の最後にネガティブな話題になってしまった。実は、東広島市や広島大学、JR西日本によって西条駅と広島大学を結ぶ自動運転BRTを走らせようという計画が発表されている。まったくの妄想だが、それが東広島駅まで伸びるようなことがあれば、東広島駅も違った存在感を見せるようになるのかもしれない。いずれにしても、新幹線の駅なのに、といいたくなるくらいの静寂の東広島駅前は、それがまたひとつの個性なのである。
写真=鼠入昌史
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