管内に約300か所の第4種踏切道を持つという、JR西日本中国統括本部安全推進部の原直人さんは言う。
「第4種踏切道は事故リスクが高いということで、国の方針としては基本的には廃止していこうという方向に向かっています。確かに廃止できれば理想なんですが、ただ現実的にはすべてをなくしていくのは難しい。いまでも地元の方が日常的に使っているところも多いですし、迂回ルートが近くにない場合もありますから」
第4種踏切道のほとんどはクルマは通れず、歩行者や自転車、せいぜい農業用トラクターが通る程度の細い道。ただ、それが故に住民の生活道路として不可欠なものになっているのだ。
ならば安全性を高めた第1種踏切道にレベルアップさせればいいじゃないか、と思うのは門外漢の思いつきに過ぎない。第4種踏切道があるようなローカル線には1日に数往復しか列車が通らない場所もあり、踏切の通行量とのバランスを考えても第1種化は現実的ではないのだ。また、警報音が生活を脅かすとして、地元の人も第1種化に反対することも少なくない。いっぽうで、事故リスクが高い4種踏切をそのままほったらかしておくわけにもいかない。と、JR西日本に限らず多くの鉄道会社は頭を悩ませているというわけだ。
「通行する人が自分でゲートを開ける踏切」の誕生
「そこで、当社では4種踏切の安全性を少しでも高められないかと、2021年に踏切ゲートを開発しました。2022年度末時点で23か所に設置しています。そして今回新たに、踏切ゲートを改良してより設置しやすくした踏切ゲート-Liteを開発。今年度中には25か所程度の踏切に設置する予定です」(原さん)
踏切ゲートとはなんぞや。普通の遮断機とは何が違うのか。詳しく聞いてみると……。
「一般的な踏切の遮断機は列車が接近すると自動で作動するようになっています。いっぽう、踏切ゲート・踏切ゲート-Liteは列車の接近とは関係なく、通行する人が自分でゲートを開いて通ってもらうものになります」(原さん)
踏切ゲート-Liteを例に取ると、歩行者が踏切にさしかかったら行く手を阻む遮断桿を自分の手で持ち上げて線路内に入り、出るときには遮断桿を前に押す。それだけのこと、だ。遮断桿は軽く出来ており、持ち上げるのにもそれほど力は要さない。従来型の踏切ゲートはコンクリートの基礎を埋め込むため施工に手間がかかっていたが、Liteはその点も簡単になっており、その気になれば1日もかけずに設置できるのだという。