堺雅人に阿部寛、二階堂ふみ、松坂桃李、役所広司と主演級を揃えた豪華なキャスト陣と、ストーリーなどの事前情報を極限まで隠す戦略で、放送開始前から話題をさらっていた日曜劇場『VIVANT』(TBS系)。

 VIVANT旋風はテレビに収まらず、小説版『日曜劇場 VIVANT』(扶桑社文庫)が激売れし、VIVANTの意味する自衛隊の非公然秘密情報部隊、通称「別班」を追った2018年刊行のノンフィクション『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』(石井暁著/講談社現代新書)も“関連本”としてベストセラーに。

 さらには「IHIステージアラウンド東京」でのファンミーティングや、原作兼演出の福澤克雄や一部キャストと一緒にロケ地の島根県を巡るオフィシャルバスツアーも発表され、「お祭り状態」になっている。

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 主演・堺雅人×演出・福澤克雄というタッグは『半沢直樹』シリーズの再来として期待値が高まっていたが、それを軽々と超えてきた印象だ。それにしても、この状況をいったい誰が想像しただろうか。

原作・演出を担当した福澤克雄 島根県観光振興課YouTubeより

『半沢直樹』の大ヒット以降、日曜劇場は“迷走”していた印象がある。

 近年でも『日本沈没―希望のひと―』(2021年10月期)や『DCU』(2022年1月期)など、豪華キャストは揃えたもののストーリーがくどく、“胸焼け”する視聴者も多かった。

 しかし『VIVANT』は1話を観た時点でいい意味で驚いた。圧倒されたのは、モンゴルをはじめとする多数のロケと、大量のエキストラを投入したリッチな画である。コロナ禍以降、ここまでリッチな作りのドラマはほとんど記憶にない。

呆れるほどにドジっ子な堺雅人

 しかも、これだけの豪華キャストを集め、ロケなどで大量の予算を投入していることは明らかなのに、物語は少々(だいぶ?)抜けているのだ。

VIVANT(TBSのHPより)

 そもそも主人公の堺雅人が、多くの視聴者が予想したであろう「半沢直樹」的なキャラではまったくない。やることなすこと、呆れるほどにドジっ子だ。

 物語展開もやけにスケールが大きく、テンポも早い。商社の社員である堺雅人が1億ドルの誤送金問題に巻き込まれる冒頭は「日曜劇場らしい企業モノかな」と思わせるが、そこからカーチェイスあり銃撃戦あり砂漠の横断あり、の急展開。

 商社の社員かと思わせた堺雅人が実は自衛隊の特殊部隊「別班」で、かと思うと自衛隊を裏切るという決断も重くなりすぎない。