堺雅人が自衛隊の精鋭部隊「別班」の一員であることが発覚する5話、幼少期に内戦に巻き込まれて人身売買された悲しい過去が発覚する6話、生き別れた父と再会する7話、と衝撃が続く。
堺雅人の過去については序盤から伏線が張り巡らされており、初回放送で登場した「素手でモノの重さがわかる」という能力も最初に出てきた時は「総菜屋のベテラン店員みたいな能力だな」と思ってしまった。
しかしそれが後に、盗聴器を察知したり、ピストルの中に入った残弾数を理解することにつながっていく。
そうしたキレ者ぶりで視聴者を痺れさせたかと思いきや、内面的には子ども同然で、愛された経験がないために「愛する」という気持ちがわからず、二階堂ふみに不器用に思いを寄せ、生き別れた父親と再会するためならば自衛隊の任務すら投げ捨ててしまう。
普段のマヌケな姿、自衛隊員としての凄腕な姿、そして不安定な内面を抱える弱い姿のギャップが1人の中で絶妙に共存しているのだ。
「一見するとマヌケで隙だらけ」という雰囲気は計算されていた?
思えば堺雅人は2008年の大河ドラマ『篤姫』でも徳川家定という複雑なキャラクターを見事に演じきっていた。家定は周囲から「うつけ」と呼ばれ、表面上はまさに「うつけ」そのものだが、時に見せる鋭さとのギャップによって視聴者を見事に翻弄した。
『半沢直樹』シリーズでも、シリアスな展開の中にあえてスキや遊びを作ることで視聴者を楽しませ、盛り上げた作品だったと言えよう。「顔芸」も存分に発揮している。
こう見てくると、『VIVANT』の「一見するとマヌケで隙だらけ」という雰囲気が、綿密に計算されていたものだったことがわかる。
相手を油断させ、舐めさせ、親しみをもたせながらするりと懐に潜り込み、至近距離から無防備なところへ衝撃の一撃を食らわせる。笑ったり、愛でたり、ゾクゾクしたり、翻弄されたりするこの痛快さは、『半沢直樹』を彷彿とさせる。
日曜劇場にかかっていた『半沢』シリーズの呪縛を打ち破ったのが、『半沢』タッグの進化作『VIVANT』であったことはなんとも痛快だ。
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9月6日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および9月7日(木)発売の「週刊文春」では、「文春“別班”が本気で追った 『VIVANT』9つの謎」と題し、堺雅人や二階堂ふみ、阿部寛ら主要キャストの知られざる秘密など、7頁にわたって同作の大特集を掲載している。さらに「文春オンライン」でも、『VIVANT』に関する記事を多数配信する予定だ。