逆に平均労働時間が短い国の分布を見てみます(図表1−2)。
週35時間未満の国を塗りつぶしてみると、ドイツやデンマーク、北欧諸国に加えてカナダやオーストラリア、ニュージーランドなどの先進国が挙げられますが、アフリカや太平洋諸国にはさらに労働時間が短い国があることがわかります。
平均労働時間が短いからといって、労働者が恵まれた環境にあるとは限りません。「ワークシェアリング」という考え方がありますが、少ない仕事に多くの人が関わることで、失業率を下げる代わりに一人あたりの収入は減少します。
また、鉱山や農園などでは、時給や月給ではなく、成果物(掘り出した鉱石や農産品の質や量)に対する歩合制で賃金を払っているようなところでは、労働時間の長さが収入に直結しません。労働時間が最も短いリベリアの失業率は4.1%(2021年:ILO集計)と世界平均(6.18%)よりも低い水準にありますが、平均年収は約900ドル(約12万円)しかありません。
実は労働時間が短い日本人
図表1−3は、週に49時間以上働く雇用者の割合を示した資料です。週49時間の労働時間は1日9時間労働で6日間以上、週休2日ならば、1日最低10時間近く働くことになります。
1位のイエメンの人口は約3298万人(2021年)で、労働人口の約60%が農業に従事しています。一人あたりのGDPは940ドル(2021年)で、石油やコーヒーが主な輸出品ですが、中東諸国の中では最貧の国です。
2015年3月に内戦が勃発し、イランが支援する勢力と、サウジアラビアとアラブ首長国連邦が支援する勢力との間で激しい戦闘が続いています。ILOは、2021年にイエメンにおける児童労働(15歳未満)を警告する報告をまとめています。
2位以下の国にはアジア、アフリカ諸国が並びます。ホテルや空港などの大規模施設の建設が相次ぐ中東諸国や、低価格の衣料品や雑貨を製造する東南アジア諸国、鉱産資源の採掘に従事する労働者など、長時間労働に従事する人が多くなっているようです。
日本の平均労働時間は週37.8時間(156カ国中101位)、週49時間以上働く人の割合は18.7%(74位)でした。
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