奥田瑛二さんは『極道記者』で一緒になって以来、いちばん頼りになる人でした。『鬼火』の前、奥田さんと飲んでたときに「今度は芳雄さんとやるんだ」みたいな話になったんです。そうしたら奥田さんが「俺の役はあるのか?」って。でも予算の関係もあるし、俺からはなにも言えませんよね。そうしたら「ちょっとプロデューサーに電話しろ」と言って、その場で「10万でも20万でも出るから」と話をつけてくれました。それに男気を感じたのか、奥田さんが主演する『恋極道』のときには、芳雄さんが二つ返事で出ると言ってくれたんです。
同時期に将来を嘱望されていた三池崇史監督との関係
――デビュー間もない北村一輝さんを、『鬼火』や『無国籍の男 血の収穫』(1997)で見出したのが望月さんです。
望月 北村くんは『鬼火』でゲイの役をやったんだけど、撮影前に芳雄さんに紹介するとき、ホットパンツ姿で芳雄さんの家に来たんです。そうしたら芳雄さんが「お前、本物か?」って。そのころ彼は、役作りのために新宿二丁目のお店でしばらく働いてたんですね。役に対する思いは当時からすごかったですよ、彼は。
――望月さんは『鬼火』『恋極道』『無国籍の男 血の収穫』の3作品で、1997年度の「キネマ旬報ベスト・テン」日本映画監督賞を受賞しています。『皆月』(1999)も含め、ヤクザ映画に新風を吹き込みましたが、実はヤクザ映画が好きだったわけではないそうですね。
望月 そんなに好きじゃないですね。だから俺の撮るヤクザ映画ってアクションシーンもすごく短いし。最初のころは現場に殺陣師がいたんです。でも俺の撮る殴り合いは3手か4手で決着が着いちゃうから、途中から殺陣師はいらないよって言ってました。『仁義なき戦い』とかはすごく好きだったけど、『フレンチ・コネクション』と『ダーティハリー』なら『フレンチ・コネクション』のほうが好きっていうのかな。ジーン・ハックマンが走り回ってるほうがリアルでいいなと思ってましたから。
――1990年代後半に作品を量産し、異色のヤクザ映画を次々に監督して、将来を嘱望されていたのが望月さんと三池崇史監督のふたりです。周囲からはライバル関係かなにかのように見られていたと思いますが。