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アメリカ人の常識「原爆投下は正しい」が揺らいだ…若者に刺さった映画『オッペンハイマー』の影響か

source : 提携メディア

genre : ニュース, 国際, 映画

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その理由は、この作品が原爆を扱っているからだ。

内容は、オッペンハイマー博士が原爆を開発するようになった経緯と、それが実際に投下されるまでを描いた物語で、彼自身の視点で淡々と語られる。

実はいまアメリカでは、原爆に関心を持つ若者が増えている。その理由を、筆者が出演するTOKYO FMのニュース番組「TOKYO NEWS RADIO~LIFE」(毎週土曜朝6時)で、ニューヨークの街で10人ほどの若者に答えてもらった。

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必死で原爆投下を正当化してきたアメリカ

『オッペンハイマー』を観た理由を尋ねると、まず返ってきたのは

「第2次世界大戦をテーマにした映画はこれまでいくつも作られてきたが、原爆を中心に据えた映画作品はおそらく初めてだから」
「歴史を扱った作品で、一見自分たちと関係なさそうだが、今でも世界は核の脅威に囲まれているから」

ロシアとウクライナの戦争、中国の東アジアへの圧力、そして北朝鮮の度重なるミサイル発射実験……アメリカの若者はこうした状況に脅威を感じ、核戦争に対する関心を高めていることが窺(うかが)える。

アメリカでは長らく、核兵器や広島・長崎について語られることはあまりなかった。原爆を開発したオッペンハイマー博士がアメリカ出身であるにもかかわらず、その詳細も謎のベールに包まれてきた。

その最大の理由は、一般市民に対して大量殺人兵器を使用した唯一の国である、という否定できない歴史の汚点を抱えているからだろう。

そのため、アメリカは必死で原爆投下を正当化しようとしてきた。映画の中では、日本に原爆を投下するかどうかを議論する場面で「原爆を使うことで戦争が早く終わり、お互いの犠牲者の数が減る」というトルーマン大統領の台詞が出てくる。実際、これがアメリカ人にとって「原爆使用は正しかった」と考える理由となっていた。

「日本に謝罪すべき」と考える若者が半数以上に

しかし、当時の政府資料が明るみになるにつれ、これが政権による世論操作のための根拠のないでっち上げだったという説を信じる人は増え続けている。原爆を落とした本当の理由はソビエトを脅かすためだったという考え方も広まってきており、映画でも熾烈(しれつ)な技術開発競争をしているソビエトに言及するシーンが登場する。